その感情
5
え、と思う華倉。
本当はそんなに邪険には思っていないんだろう、と浅海は言う。
いつものあの会話も、売り言葉に買い言葉、といったように、浅海には見えるらしい。
じっと、言い終わって華倉を見る浅海。
華倉は缶から口を離し、一息吐く。
まぁな、と暫くしてから言った。
本当はそんなに嫌いじゃない。
裕が華倉に惚れてなかったら、普通に友達になっていたかも知れない、と告げて。
何だそれ、と浅海。
「惚れてちゃいけないのかよ?」
少し眉をひそめて、浅海が訊く。
華倉は缶を握り締め、頷いた。
「……だって」
そこまで聞いて、裕は下唇を噛む。
話は途中からだが、自分の事だと判ると、出て行きにくかった。
華倉は何て続けるのか、聞きたいようで聞きたくないような、不思議な気分だった。
そんな彼の背後から、声が唐突にして。
「坂下くん、何してるんですか?」
びくーっ、と裕が思い切り飛び上がる。
声掛けんじゃねぇよ! と魅耶の胸倉を掴む。
魅耶もその裕の行動に吃驚して、何事かと目を丸くする。
「あ、居たの?」
その裕の声に気付いて、浅海がこちらに来る。
華倉もきょとんと二人を見ていた。
どうやら、話を聞いていた事には、気付かれていないらしい。
それから紳士服売り場へ行き、無事にお使いを終える。
時刻は午後4時。
「んじゃ、カラオケ行って帰るか魅耶!」
「オレも行くーっ!!」
「貴方はお呼びじゃないです」
デパートを出て、そんな会話をしながらカラオケボックスへ向かう。
何だかんだで4人で3時間歌って。
ちょっといい休日だったな、と華倉が思っていたのは、内緒だという。
「また4人で出掛けね?」
「良いですね!」
「オレ、華倉とデートしたい」
「言ってろ」
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