兄×弟〜 Extra chapter 〜
謝罪の紙
行為後のまどろみの中、ふと玄関先に落ちている一つ折りされた紙が目に入った。
「伊弦ー、アレとってきて?」
人差し指で紙を指すと、伊弦は小さく返事を返し、上半身裸のままそれを拾い、ベッドに寝そべっている俺に渡す。
「なんだ、それ?」
生返事を返しながらソレを開くと、印刷のような綺麗な字で
『ごめんなさい。悪い奴等じゃないんですよ。』と。
これをポケットか何処かに忍ばせたのは、今日の奴等だろう。
ということは実行する前からああなるってことはわかってたってことだろうか?
それとも、何かあったときの予備として?
それにしても可笑しい。
誘拐(痴漢?)をしたのに、謝るなんて。
小さく笑いを零すと、伊弦が後ろから優しく抱きしめながら、紙を覗き込む。
数秒目で追った後、不機嫌そうに眉根を寄せて紙を握りつぶしてゴミ箱に投げる。
少し荒々しいキスを額から頬にかけて落とされ、眠りかけていた身体の熱が目を覚ます。
少し前までひとつ折りの、今はぐしゃぐしゃに丸められた紙が、ゴミ箱に入ったかどうかは、想像にお任せしようかな?
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