雅臣と輝紀
ちゃんと俺も…
雅:輝紀。俺、旅に出ようと思うんだ。
輝:@ああ、そう。Aどこに行くんだ? Bそんな! 寂しい……。
雅:えっ!? なにその選択肢形式!? 俺にその中から選べってこと!? そうなの!? そうなんだね!? それならもちろんBを選ぶよ!!
輝:……ふーん。
雅:あ、相変わらず反応薄いね……。輝紀が提案してきたことなのに……。
輝:いつも思うんだけどよ、お前は俺になにを望んでるんだ?
雅:へ? どういうこと?
輝:お前、毎回俺の反応を伺うようなことばかり訊いてくるじゃねえか? それはなんなんだって訊いてるんだよ。
雅:反応? そだっけ?
輝:……無自覚なのかよ。まあいい。……でだ。無自覚でもなんでもいいけど、俺の反応なんてわかりきってることだろ?
雅:輝紀のことなら俺はなんだって知ってるからね!
輝:それは今は置いといて。
雅:そこ重要! 置いとかないで!
輝:今回のもそれの類だろ? だから、お前は俺にいったいどんな答えを期待してんのかと思ってな。
雅:それで、あの三択?
輝:まあ、そんなわけだ。……お前はまんまと俺の思ってた答えを選んだわけなんだが。
雅:凄い! 輝紀も俺のことはなんでもわかるってことだね!
輝:お前はわかりやすすぎるからな。
雅:わかりにくいより、わかりやすい方がいいでしょ?
輝:わかりやすすぎるのも問題だ。
雅:そう? でもま、俺がわかりやすいのは、輝紀限定だと思うんだけどな?
輝:[……これも、こいつの場合は無自覚の類なんだろうな。つか、この台詞でトキメいちまった俺もどうかと思うけど……]
雅:どしたの、輝紀?
輝:なんでもねえよ。
雅:いたっ! なんで殴るの!?
輝:ムカついたから。
雅:へ!? 八つ当たりなんて酷くない!?
輝:お前いわく、俺は酷い奴なんだろ? 毎回言ってんじゃねえか?
雅:うっ……。輝紀って、根に持つよね。
輝:お前ほどじゃねえよ。
雅:お、俺は別に執念深くないもん!
輝:ほう……。俺は執念深いってか?
雅:あ……! (輝紀に思いきりジト目で見られ、しまったという顔をする)
輝:そうかそうか。お前は俺のことをそんな目で見てたんだな。それは知らなかったよ。そーか、そーか、そーなのか。
雅:ご、ごめんなさい! 本当にごめんなさい! そんなことこれっぽっちも思ってません! 輝紀はすっごく優しい人です!!
輝:そういう取り繕ったような言いわけする方が、認めてるって言ってるって気づかないのか? [本当、わかりやすいよな。つか、単純なんだよな基本的に]
雅:……。(輝紀に指摘され、両手で口を塞ぐ)
輝:……。(雅臣の反応に笑い出してしまいそうになるが、必死でそれを堪える。表情が弛んでしまわないよう注意しながら雅臣を睨む)
雅:……。(輝紀の反応が気になり、なにも言葉を発することがでず、顔色を伺う)
輝:……それで? お前は本当に旅に出んのか? (このままでは平行線のまま先に進まないと思い、初めの話に戻ることにする)
雅:……出ません。(両手をそろそろと離し、輝紀の質問に答える)
輝:じゃあ、やっぱり俺の反応を伺ってたわけだ?
雅:……結果的には、そういうことになります。
輝:ふーん。
雅:お、怒った……?
輝:怒って欲しいのか?
雅:いいえ! 滅相もございません!
輝:ならいちいち訊いてくんなよ。別に俺は怒っちゃいねえんだからよ。
雅:ホント?
輝:……。俺が、お前のよくわからない発言に、本気で怒ったことがあるか?
雅:……ない……と、思う。(自信なさ気に上目遣いで輝紀を見る)
輝:だろ? 気にする必要はねえんだよ。
雅:……うん。
輝:なんだよ、ジッと見やがって。
雅:いや、その……。輝紀のこと、やっぱ好きだなーって思って。
輝:……なんで今の会話の流れで、そういう結論に達するんだお前は?
雅:だって、好きだって思ったんだもん。輝紀はやっぱり輝紀だなって。
輝:いまいち、意味がよくわかんないんだが?
雅:いいよ、わかんなくても。ちゃんと俺が輝紀のこと好きだってことだけわかっててくれれば。
輝:……。(真っ直ぐに見つめられ、柔らかい笑顔にドキリとしてしまう)
雅:どったの、固まっちゃって?
輝:……なんでもねえよ……。[こいつは計算なんてできないだろうから、天然で言ってんだろうな。こいつが天然……。いや、でもそんな……]
雅:うわ!? ど、どうしたのいきなり抱きついてくるなんて!?
輝:……なんとなくだ。
雅:う、嬉しいからいいんだけど……。(予想もしていなかった輝紀の行動に、動揺する)
輝:[毎回俺の反応を伺ってくんのは、不安だからなのか? 俺が冷めてんのは知ってるはずだろうが、やっぱそう感じちまうんだろうか……?]
雅:……輝紀?(輝紀のわずかな変化に敏感に反応し、輝紀を自分から少し離すと、輝紀の顔を覗きこむ)
輝:……ちゃんと、俺も……。
雅:……?
輝:……好き、だよ……。(顔を伏せがちながらもハッキリと口に出す)
雅:……!? 輝紀!!(輝紀の言葉に、驚き目を見開く。しかしすぐに歓喜に顔を綻ばすと、輝紀を思いきり抱きしめた)
輝:痛い、馬鹿。
雅:今は我慢してよ。俺の愛情表現なんだから。
輝:恥ずかしい奴……。(そう言いながらも雅臣の背中に腕を回して力強く抱きしめ返す)
雅:ありがとう、輝紀……。
輝:……うるせ。
二人は小さな幸せに浸りながら、互いをきつく強く抱きしめあった。
【END】
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