雅臣と輝紀

注射

※大学生※


雅:輝紀さ、【注射】っていったらなにを一番に頭に浮かべる?

輝:は?

雅:直感で答えてください。

輝:? 注射ねぇ……。採血?

雅:そうなんだ? ちなみに、俺は病院だよ。

輝:ああ、そう。……で? そんなこと聞いて、お前はなにがしりたいんだ?

雅:今のは、ただの前置き。本題はこっから。……じゃあ、【お注射】っていったらなにを思い浮かべる?

輝:…………。さっきと、同じ。

雅:ウソだ! 今の間は絶対に違うこと考えてたでしょ!? それに、なんで目を逸らすの?

輝:別に、意味はない。(雅臣から不自然に目を逸らしたままボソリと答える)

雅:誤魔化さないでちゃんと教えてよー。ここには俺と輝紀しかいないんだから、恥ずかしがることないでしょ?

輝:……ニヤニヤすんな、気色悪い。お前は、いったい俺がなんて考えたと思ってんだよ?(雅臣に視線を戻して問いかける)

雅:俺と同じことかなって。

輝:……同じって?

雅:輝紀は言ってくれないのに、俺には言わせようっての? それはいくらなんでもフェアじゃないんじゃない?

輝:ムダに楽しそうだなお前。

雅:だって、もし輝紀が俺と同じこと考えてたら嬉しいじゃん?

輝:ホントにそれだけか?

雅:まあ、違う気持ちがあることは否定できないけどね。

輝:……嫌な予感がするから言わない。

雅:えー!? そんなこと言わないで教えてよ!

輝:お前が言ったらな。

雅:そんなこと言って、どうせ教えてくれないんでしょ? 輝紀のことは熟知してるんだからね。

輝:……ちゃんと言う。約束する。

雅:ホント?

輝:ホント。

雅:わかった、信用する。じゃあ、せーので言うのは?

輝:……却下。

雅:なんで?

輝:どうせ、どっちかは言わないってわかってることは初めからしない。

雅:……ハッキリと否定できないから悲しいね。

輝:だろ? だから、さっさとお前から言え。今回はちゃんと言ってやるから。

雅:むー……。しかたないな。輝紀がそこで言うなら、言うよ。そのかわり、約束破ったら覚悟してよ?

輝:あー、わかったよ。さっさと言え。

雅:……じゃあ、言うよ。(たっぷりと間をとる)俺は、シモ的なことを考えてしまいました。

輝:…………。

雅:あっ! 笑った!? ってことは輝紀は違うこと考えてたの!? うわー、マジで!? 俺めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん!

輝:いや、違わない。残念ながらな。本当なら、違うことを考えてたかったんだが、我ながら残念な脳をしてると思うぜ。

雅:違わないってホント!? それは嬉しいんだけど、じゃあなんで笑ったの? しかも、なに気に俺のことも残念だって言ってない?

輝:まあ、気のせいだって思っておけばいいんじゃないのか? 笑ったのは、ホントに同じ答えだとは思ってなかったからだよ。

雅:……残念だって件はあとで問い詰めるとして。やっぱり俺と輝紀は以心伝心、最強カップルだったんだね!

輝:まあ、本音を言うと俺はもっと直接的なことを考えてたんだけどな。(本気で嬉しそうにしている雅臣を笑いながら、顔を近づけて耳打ちをする)

雅:――っ!! 輝紀。それって俺のこと誘ってんの?

輝:さあな?

雅:――もう!! その顔反則! 理性も全部ぶっとんじゃうじゃん! 抗えなくなっちゃうじゃん……!

輝:いつもみたいに素直になればいいんじゃないのか?

雅:もう! そんなこと言って、どうなっても知らないからね!?

輝:望むところだ。……俺にアレを言わせてみろよ?

雅:――っ。絶対に言わせてやる。


 輝紀の挑発に、雅臣は抗うことなく本能のまま輝紀をその場に押し倒した。
 押し倒された輝紀は、背中に感じた痛みに少し顔を歪めながらも、雅臣にキスをする。
 互いを求め、激しく貪るキス。
 雅臣は多少乱暴な手つきで輝紀の衣服を剥いでいく。輝紀は躰を浮かし、雅臣が脱がしやすいようにする。
 いつになく積極的な輝紀に、雅臣は全身が一気に熱くなっていくのを感じた。
 もう止まらない。輝紀がすぐに欲しい。あんなことを耳元で囁かれたら、理性なんて保ってられるわけがないじゃないか。雅臣はまだ耳に残っている輝紀の声を頭の中で反芻させながら輝紀の首に顔を移動させていく。
「……っ。俺を、満足させろよ?」
「言われなくても……!」
 輝紀になんども煽られながら、雅臣と共に快楽の渦に飲まれていった。



【END】