雅臣と輝紀
イエスorノー…?
※大学生※
輝:雅臣! おい、雅臣!
雅:なーにー?
輝:のんきな声出してねえで早く来い! これ! 一体どういうことなんだ!?
雅:ん? (輝紀に呼ばれ、洗濯物を畳んでいた手を止める。そして、輝紀のいる寝室に移動する)
輝:お前は、一体、何を、考えて、行動してんだ!?
雅:え? 何かした? 俺。 (一点を指差しながら、肩を震わせている輝紀に問う)
輝:とぼけてんじゃねえぞお前! これだよ、これ! (それまで指を差していた物を持ち上げ、雅臣の目の前に突き出す)
雅:……ああ、これ? よくない? 昨日買い物行ったら偶然見つけちゃって。
輝:な・ん・で、買ってくんだよ! (嬉しそうに笑っている雅臣の顔に手にしていた物を投げつける)
雅:おぶっ! て、輝紀、痛いんだけど……。 (顔面に激突し、床に落ちた物を拾いながら文句を言う)
輝:痛いのはお前の存在だ!
雅:えっ!? ちょ、それ地味に酷いからね!?
輝:何が酷いか! 酷いのはお前だ! 何も考えずに行動すんのは止めろって言ってんだろ!? 酷い以前に大バカだこの野郎!
雅:……いくら俺でも、傷つくんだよ?
輝:ドMがこれくらいで傷つくわけ無いだろうが。
雅:まだそれ言うの!? いい加減離れようよ!?
輝:うっせえ変態変人キチガイ野郎。
雅:一息でそんな酷い言葉、連発しなくてもいいんじゃない……? (拾った物を抱きしめながら項垂れる)
輝:……まだ思いつくんだが?
雅:追い打ちかける気!? 俺、立ち直れなくなっちゃう!!
輝:別にいいんじゃねえのか?
雅:再起不能になったらどうするの!?
輝:大人しくなって嬉しいが?
雅:……そんなこといっちゃって、寂しくなっちゃうくせに。
輝:ばっ、ばか! そんなことないんだからな! お前がいないと寂しいなんて、そんなことあるわけないんだからな!
雅:……え? て、輝紀、どうしちゃったの? (頬を染め、そっぽを向きながら言った輝紀の様子に、狼狽える)
輝:お前のためを思って言ってるんじゃないんだからな! 全部、俺のためなんだからな! 勘違いすんなよ!
雅:て、てーるきくん……? (普段からは想像もつかない輝紀の様子に、対処のしようがなく、困ったように固まる)
輝:……………………。
雅:て、輝紀?
輝:……疲れた。
雅:は……?
輝:彩に言われたからやってみたけど、結構頭使うな。
雅:輝紀、何言ってるの……?
輝:こういうのはやっぱ俺には向いてねえんだよ。あいつのいうことを真に受けるのはやめにした方が懸命だったな。 (うろたえている雅臣をよそに、独り言で文句を言い続ける)
雅:輝紀! てるき! テルキー!!
輝:うっせえな! なんだよ人の名前連呼しやがって!!
雅:輝紀の方がうるさいからね! 輝紀がおかしくなっちゃってたから心配してたのに、怒鳴ることないじゃん!
輝:は? 俺がおかしいだって?
雅:確かにおかしかったでしょ!? 自覚ないの!?
輝:うっせえ! 自覚あるよ! 悪かったな! 俺だってやりたくなかったがしょうがねえだろ! 文句あっか! ああ!?
雅:いったいなんなの!? もう怒鳴らないでよ! だんだん怖くなってきてるよ!
輝:そう、だな……。 (雅臣の泣きそうな声に落ち着きを取り戻し、大きく溜め息をついて雅臣を見る)
雅:……。 (一見落ち着いている様子の輝紀を伺う)
輝:もう二度と俺はあんなことはしない。
雅:うん。
輝:ちょっとワケあって、あれは彩に無理矢理やれって言われてたんだ。
雅:うん。
輝:ホントに俺の意思じゃないんだからな。
雅:うん、分かってる。
輝:本当に分かってるか?
雅:うん。大丈夫。さっきの輝紀はびっくりしたけど、こっちの輝紀が本当だって、俺にはちゃんと分かるから。
輝:……解決した気にならないのは、俺だけか?
雅:輝紀だけ、輝紀だけ。俺はもう疑ってもびっくりもしてないから。あと、さっきは怒鳴ってごめんね。
輝:俺の方こそ、八つ当たりして悪かった。
雅:いいよ、気にしてない。……それでさ。
輝:ああ、大事なこと忘れるところだった。コレ。後で捨てるからな。 (雅臣の抱きしめていた物……枕を奪い取り言う)
雅:え!? そんな!? せっかく輝紀の異常行動を気にしないであげたのに酷い!
輝:やっぱりそんなこと考えていやがったのか。妙に素直に納得すると思ったら。
雅:でも気にしてないのは本心だよ? さっきのはさっきので可愛かったし。
輝:よし。やっぱり捨てるのは決定だな。
雅:そーんーなー!! (部屋から出て行く輝紀に縋ろうとするが、輝紀の眼力に気圧されてその場から動けなくなる)
輝:……こんなんなくたって、俺はいつでもこっちだっつの。 (部屋から出てから、手にしているピンク色の方の枕に視線を落としながら呟く)
雅臣が買ってきた物、それは、いわゆるピンクの方にマル、ブルーの方にバツの書いてある、【イエスノー枕】だった。
その枕を輝紀が本当に捨てたかどうかは、雅臣には知らされることはないのであった。
【END】
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