君だから3
口を離した彰は、不適な微笑みを浮かべて卓磨を見てくる。
その彰の表情を見た卓磨は、少しだけだが恐怖に似た感情を抱いたのであった。
「この日のために、ちゃんとローション買っといてよかったな」
彰は卓磨をうつ伏せに寝かせ、腰を高く上げさせながら嬉しそうな顔で独り言を言う。
初めてする恥ずかしい格好に、卓磨は枕に顔を埋めながら耐えていた。その卓磨の様子のおかげで、彰の機嫌はどんどんよくなっていた。
「お前って、結構いい尻の形してるんだな」
「う、うるさいな!ケツ撫で回したりしてないで、するなら早くしろよ!」
卓磨の尻の形を確かめるように撫でている彰に、卓磨は顔を彰の方に向けて叫ぶように言う。
「わかったよ」
彰はしょうがないとでも言うように、用意してあったローションのキャップを片手で開ける。開いている片方の手は、いまだに卓磨の尻を撫でていたりする。
「つっ……」
「冷たいか? すぐ暖かくなるから、我慢しろよ?」
不意にきた冷たい感触に反応した卓磨に、彰は言い聞かせるように言ってローションを尻に塗り込むように撫で始めた。
「だから、彰──っ」
再び尻を撫で始めた彰に対して卓磨が抗議の声を上げようとした時、卓磨の後孔に一本の指が一気に入ってきた。容赦のない彰の行動に、卓磨は息を呑んで枕に顔を埋める。
「痛かったか?」
「彰、お前っ」
わざとらしく訊いてくる彰に、卓磨は顔を上げないまま怒りの声を出す。
そんな卓磨にはお構いなしに、彰は卓磨の後孔を慣らすように指を動かし始めた。
「どうだ?」
「なんか……変……」
排泄のためにしか使ったことのないところに感じる初めての違和感に、卓磨は必死に耐えていた。その姿がとてつもなく愛らしいと感じた彰は、少しずつ解れてきた後孔に指を一本増やす。
「あ…ん……」
予想していたよりも良さそうな卓磨の反応に、それまでゆっくりしていた指の動きを早くする。
「ん…んん……」
「痛くはないだろう?」
卓磨の押し殺した声を聞き、さらに指を一本増やし、奥へと指を進めながら彰は問う。それに答える余裕のない卓磨は、ただ後孔の異物感に耐えているだけだった。
違和感の他に感じる、じわじわとくる決して不快ではない感覚。それを感じ始めていた卓磨は、あり得ない!と頭の中で何度も繰り返していた。
俺って、こうも簡単にケツでも感じられるような体質だったのか?何か、悔しいような、切ないような……。
卓磨は自分の体の変化に複雑な感想を抱く。
「ん? どうした?」
卓磨の異変に気づいた彰が、後孔から指を抜き取り卓磨の顔を覗き込む。
「な……んでも……、ない」
「…………。初めてなんだから、違和感があるのは仕方ないよな」
「え……?」
不意に頭を撫でられた卓磨は、突然の彰の行動に枕に埋めていた顔を上げる。そして卓磨の目に映ったのは、優しそうな彰の顔。
「辛いってのは分かってるけど、悪い。俺、お前のこんな反応や姿を見せられて、もう限界なんだ。だから、ちょっと我慢してくれるか?」
落ち着いた優しい声色で言ってくる彰に意表をつかれた卓磨は、気の抜けた顔をする。そんな顔をしていた卓磨だったが、ふと視線を移した先にある彰の雄の高ぶりを目にし、次の瞬間にはいつものような笑顔を浮かべて彰に言う。
「大丈夫だから、俺はそんなに柔じゃねえよ」
「フッ。そうだったな」
普段の調子に戻った卓磨を見た彰は目を細めて微笑うと、卓磨の額に軽くキスをして上体を起こす。
「だいぶ解れてきたし、ココ、何だか物欲しそうにヒクついているから、もう挿れてもいいか?」
「っな!? ヒクっ!?」
卓磨の後孔を撫でるように触れて言ってくる彰に、さっきまでとはまるで別人だ!詐欺だ!と心の中で悪態をつきながら、思い切り彰を睨む。
「さっきも言っただろ? もう限界だって……」
「──っ」
言いながら熱く高ぶっている雄を後孔に当ててきた彰に、卓磨はハッと息を呑む。
「躰、堅くするなよ? 俺のは指とは比べものにならないんだから、力抜かないと痛い思いするかもしれないぞ?」
確実に強ばった卓磨を見て、彰は卓磨の雄をゆるゆると扱いてやりながら、躰から力を抜かせるようにする。
「ん……あっ……」
不意にきた前への刺激に、卓磨の躰から力が抜けた。その隙をついて、彰は一気に腰を進めた。
「んんっ!」
初めての挿入だというのに、まったく容赦のない彰を恨めしく思いながらも、入ってくる重量感に耐えるのに精一杯で、彰を睨む余裕は今の卓磨にはどこにもなかった。
「んっ…あっ……!やっ、あきら……っ」
「声、エロい……」
抽挿をするごとに、聞いたことのない甘い声を上げる卓磨に、彰はいっそう煽られ、動きを緩めることをしない。
「はっ…あっ……んっ…ああっ!」
彰が腰を進めていく中で、彰の雄が卓磨の中の一点を掠めた時、卓磨がより高い声を上げた。
彰は卓磨の反応を見て、わざとそこばかりを責めるように腰を打ちつけていく。
「やっ…ばかっ……やめっ……!」
強すぎる快感に、卓磨はたまらずに顔を上げて彰を睨みつける。
その卓磨の表情は、彰が予想していた以上に煽情的で、彰はその表情を見ただけで達しそうになってしまった。それを必死に堪えた彰は、スパートをかけるため卓磨の雄を扱きながら腰の打ちつけを激しくしていく。
「あっ…んっんっ……!」
「くっ…たくま、俺、そろそろ、ヤバいかも……」
「ああっ! おれ…も…もう、イくっ」
「っ……!」
卓磨のその甘く掠れた言葉を合図に、彰と卓磨はほぼ同時に白濁を吐き出した。
卓磨の中に白濁を吐き出した彰は、後孔から雄を抜き、卓磨の上にのしかかるように横になる。
「……よかったよ、卓磨。お前は、気持ちよかったか?」
「そ、そんなこと、訊くなよ!」
「だな。あんな声を出して、あんな煽情的な顔していたんだからな、訊くまでもなかったか」
「彰!」
意地悪な笑みを浮かべながら言う彰に、卓磨は、悔しさからなのか恥ずかしさからなのかよく分からない複雑な表情を浮かべて彰の腕を殴る。
「痛いな」
「自業自得だ!」
フイッと顔を背ける卓磨を、彰は背中から手を回して卓磨を抱きしめる。
「で、どうする?」
「何が?」
問いかけられた卓磨は、躰を反転させ彰と向かい合う形になりながら問いかけ返す。
「お前辛そうだから、今度にするか?」
「だから何が?」
「俺を、抱くんだろ?」
挑発的に微笑いながら言う彰に、卓磨は一瞬だけ目を見開いてから彰と同じような微笑みを浮かべる。
「ああ、絶対に抱くさ。でも、今日はさすがに無理……」
「ハハハッ」
「笑うなよ!」
「悪い。お前が情けない声出すから」
「くっそー。……それよりさ、本当に抱かせてくれんの?」
疑うように訊いてくる卓磨に、彰は卓磨の髪に指を絡ませながら言う。
「ん? ああ。まあ、抵抗がないと言ったら嘘になるが、好きな奴にヤられるのならきっと後悔はしないはずだからな。それに、お前はヤらせてくれたし」
「じ、じゃあ、期待に応えられるようにしないとだな!」
彰の言葉に、心なしか頬を赤く染て言う卓磨の髪に彰は口づけを落とし微笑むと、ゆっくり目を瞑る。
その気配を感じ取った卓磨は、彰の背中に強く腕を回し、彰にならって目を瞑った。
【END】
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