恋愛部成就課
報告書NO.03 (1)
縛るとか、叩くとか、どうにも僕には理解ができない。いや、洗脳されるんじゃないかってくらい説明されて、理解はなんとなくできたけれど、やりたいとは思わない。けれど、僕の恋人は普通じゃ満足をしてくれない。
「桜一郎(おういちろう)、今日こそは本格的なスパンキングをぜひ!」
「……叩くと僕の手が痛くなるから嫌だよ」
「なんだその言い訳のしかた! そんなおかしい言い訳でオレが納得なんてするわけないだろ! スパンキング! スパンスパン!!」
朝から元気な僕の恋人、加也斗(かやと)が、大学へ行く途中の道で卑猥な言葉を連呼していた。
スパンキングはわかる。縛るとかではなく叩くくらいなら譲歩してやってはいるが、本格的というのはどういうもののことを差して言っているのだろ。
手じゃなくて道具を使うとか? ムチ? 確か加也斗のお道具箱とかいうやつの中には、ムチがあったような気が……。まあ、ムチなら僕の手は痛くならないけれど、力加減を間違えたらただ痛いだけだって言ってたし……。
……ああ、ダメだ。こんなことを考えるなんて、僕はもしかしてそっちの道に足を突っ込んでしまっているのだろうか。僕はノーマルのまま生きていたいのに。加也斗と付き合っている限り、その望みは叶わないだろうけれど。でも好きな気持ちは確かだから、別れる気はない。
頭一つ小さいところで、まだスパンスパン言っている加也斗の口を手で塞ぐ。すると、加也斗がニヤニヤした目で僕を見上げてきた。きっと今、口を塞ぐプレイ? とかでも思っているのだろう。
スパンキングで頭の中がいっぱいになっている加也斗を一日どう黙らせようかと考えながら、大学の敷地の中に入って行った。
「エッチしたい!」
僕のアパートに入り、靴を脱ぐなり加也斗が言ってきた。それを軽くかわしながら、リビングに入り寛ぐ。
「エッチ! セックス! 交尾!」
「交尾って言うのはやめて」
「じゃあしよ? 桜一郎の言ったとおり、一週間も我慢したんだよ? オナニーだってしてないんだから!」
「いや、オナニーくらいしとけよ。躰に悪いだろ?」
「そんなことしたら我慢プレイの意味がないじゃないのさ」
そんなプレイは聞いたことはないし、プレイという名目で我慢を言ったわけじゃない。ただレポートに集中したかったから、一週間くらいセックスはしたくないって言っただけだ。
「……なんでもかんでもプレイにしたがるとか、セックスのことしか考えられないのかい、加也斗は?」
「当たり前。オレはセックスしてる時が一番楽しいんだから。その次に楽しいのは、桜一郎と一緒にいる時」
「ああ、そう……」
一緒にいるのが楽しいと思ってくれてるのはいいけれど、なんだか納得いかない。
「……セックスするのはいいけど、普通にしな――」
「しないね。普通じゃ満たされない」
食い気味に言ってくる加也斗に、大きく溜め息をついた。
「……お尻叩くので、いいの?」
「うんうん! ホントはムチで叩いて欲しいけど、オレの家じゃないから道具ないから残念」
朝に僕が予想していた通りの発言をした加也斗に、失笑が漏れる。
最後の最後まで拒否をすればいいのだろうが、加也斗のしつこさにいつも途中で折れてしまう。
つっぱねきれない僕は甘いのか、それとも潜在的にそういうことをしたいと思っているのか。……いや、そんなことはない。と思いたい。
「あっ、ああっ、お尻、きもち……! もっと、奥まで、あっ、ずこずこ、してぇ……! もっと、強く叩いて!」
「くっ、おま、あんま絞めんな……」
加也斗の尻を叩くたびに、中がぎゅっと絞まる。力加減のされていない容赦ない締めつけに顔を歪めて強い快感をやり過ごす。
ベッドに移動するより前に加也斗に服を剥かれ、上に乗っかられた。
僕のちんこを銜えて勃たせると、いつの間に解していたのか加也斗はすぐに跨って僕を中に入れた。
何度か加也斗自ら腰を振って快感を高めてから、一度抜き、四つん這いになって挿入を求めてきた。
最初こそ気が乗らなかった僕だったが、スイッチが入ってしまえば快感を追い求めることに夢中になるのは加也斗と変わらない。
「あん、ああっ、あっ! そんな、加減なんてしないで、んんっ、もっと、叩いてぇ!」
腰を打ちつけながら、白い尻を赤くなるまで叩く。痛そうだなと思うが、それでも加也斗はそれが気持ちいいらしいから、近頃では加減をしつつも強く叩くことが多くなっていた。
腰を打つタイミングに合わせて尻を叩けば、触ってもいないのに加也斗のちんこから先走りが床に垂れていく。
本当にこういうのが好きなんだな、とか考えて冷静になりそうになるけれど、加也斗を啼かせるために、もうどこにあるか把握している加也斗の前立腺にちんこを擦り当て、不規則に尻を叩いていく。
「あっあっ、ああっ……! んん! きも、ちい……んああっ……! あっ、だめだめだめ――!!」
「うわっ……」
加也斗の最奥を突き両手を尻たぶにぶつけた時、加也斗の中がいっそう強く絞まり伸縮を繰り返した。扱いていないちんこからは勢いのない精液がとろとろと流れ、床に水溜りを作る。
尻穴の絞めつけにちんこが持っていかれそうになりつつも、なんとか耐えてふっと息をついた。
「やめ、ないで……、もと突いて、叩いてっ!」
動きを止めた僕に、加也斗が首をこちらに向けてねだってきた。その頬は赤く上気していて、大きな瞳からは涙が流れている。たえず喘いでいた口からは唾液が顎まで流れ、顔はぐしゃぐしゃになっている。
加也斗の顔を見た瞬間、なんだかよくわからない感情がふつふつとこみ上げてきて、僕は気づけば加也斗の尻を思い切り叩き、頭の中に思い浮かべていないはずの言葉を発していた。
「こんなにお尻真っ赤になるまで叩かれて、精液お漏らししちゃうほど気持ちよかったんだ? ほらっ! ははっ。叩くと、中がきゅーっと絞まるよ? ほらっ、ほらっ! すっごいビクビクしてる。もしかして、擦ってあげなくても叩くだけでイけちゃうんじゃない?」
「ああっ! あんっ! き、きもちいいっ! お尻、強く叩かれて、気持ちいいっ! ああっ! いっぱい、叩いて!」
叩くたび、言葉をかける度、面白いほどにびくびく感じて加也斗の躰が跳ねる。一度精を放って萎えていたはずのちんこは、先走りをとろとろ垂らして硬くなっていた。僕は腰を動かしていない。もしかして本当に、叩くだけでイけてしまうのではないだろうか。
「あっ!? だめだめだめ!! やだ! 抜いちゃ、やだぁ!」
「でも加也斗、僕が動いてないのに、ここはこんなに透明な液をおもらししちゃってるよ? 僕のちんこなくても、イけちゃうでしょ?」
「ひぁっ!」
ちんこをギリギリまで引き抜きながら、加也斗の先走りでぐちょぐちょになっているちんこをぎゅっと握った。一番感じるちんこへの直接の刺激に加也斗の腰が震え、抜けそうになっていた僕のちんこは加也斗の中にもぐっていった。
「やだな加也斗。自分で僕のちんこ飲み込んじゃったよ? ちんこ、いらないんじゃなかったの? こういう風に! 叩く方が! いいんでしょっ?」
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