恋愛部成就課

報告書NO.04 (1)




「俺の初めて、もらってください」
「……はい?」
 曇り空の隙間から時折光が差してくる昼間の高校の屋上。オレがいつものように悪友と屋上でサボっていると、悪友、邦雄(くにお)が、寝転んでいるオレの腹の上に跨ってきた。
 言われた意味がわからず、オレはマヌケな声で聞き返した。
「セックスして?」
「お前、女だったのか?」
「いやいやいや。清晴(きよはる)、何回俺の裸見たと思ってんだ? 俺は正真正銘男だって」
 お前の裸なんて一回も見たことなんてねえよと思いながら、いつものように笑っている邦雄を見上げる。
「……男のお前が、なんでそんなこと言うんだ? 冗談にしちゃ、質悪いぞ?」
「これが冗談じゃないから始末に負えないよな」
 どうしてそんなに笑っていられるのかわからない。何を言いたいのかわからない。
 オレの表情を見れば、今にも怒りだしそうになっていることなど一発でわかるはずなのに、邦雄は変わらずに笑みを浮かべたままでオレの上からどけようとしない。それどころか、学ランの上を脱ぎ、ティーシャツも脱ぎ捨てた。上半身裸になったその行動から、冗談ではないということがようやくわかった。
「……勘弁してくれよ。セックスは好きだけど、男とする趣味はねえぞ?」
「俺だって、男とセックスしたことなんかねえよ? でもま、大丈夫だろ、最後までするわけじゃねえし」
 あっけらかんと言ってのける邦雄に、呆れて怒りもなくなってしまう。怒りがなくなれば、残るのは疑問のみ。
「どういうことか、説明をしろ」
「好奇心ってことで納得してくんね?」
「納得なんてできるわけねえだろ!」
「だよねー。でも観念して。ぜってえやめねえから」
 笑いつつも低い声で言ってきた邦雄に、顔が強張る。
「ぶっ飛ばすぞ、テメエ」
「はっはー! 清晴にそんなことできるわけねえだろ? お前は俺より力が弱い。それにお前は動けない」
 邦雄は言うなり、素早くオレの上から下りてオレの躰を脱いだ邦雄の学ランの上にひっくり返すと、太ももの辺りに乗っかり、さっき脱ぎ捨てたティーシャツでオレの腕を後ろ手に縛った。
「おい! やめろ馬鹿! こんなことして、なんにも楽しくねえだろ!?」
 あまりにも素早い動きに、抵抗の声をあげるのが精一杯だった。
 顔を捻っても邦雄の顔が見えないが、きっと邦雄の顔からは笑みが浮かんだままなのだろう。
 もがきたくとも、邦雄の言った通りオレは邦雄よりは力が弱い。悔しいが、こいつと力比べをして勝てたためしがない。そんな奴にどうやって抵抗をすればいいというのか。大声で喚き散らせばあるいは可能性はあるだろうが、邦雄が行動をやめるよりも早く教師なり他の人間が来てしまうと可能性を考えると、こんな情けない姿を誰にも見られたくなくてそれだけはできなかった。
 沈黙した邦雄が、オレに覆い被さり、躰を少し斜めにさせて後ろからオレのズボンのベルトに手を回して外しにかかる。
「邦雄、マジで止めろって!」
 無駄だとわかっていても、黙って邦雄の行動を受け入れることはできないので、抗議の声をあげることもやめない。
 ベルトが緩められ、ズボンのフックとファスナーが開く。
「ひっ!」
 パンツの上からちんこを握られ、恐怖に喉が引きつる。
「そんなに怖がらなくても大丈夫。怖いことはしないから」
 ちんこを緩い力で揉みながら、耳元で囁いてくる邦雄。そんなことを言われて安心なんてできるわけがない。それなのに、なぜか俺のちんこは反応をし始めている。恐怖で感覚が麻痺してしまったのだろうか。こんな状況で普通は勃つはずがないのに。
「清晴のちんこって大きいよね」
「だ、黙れ!」
 喋るたびに邦雄の吐息が耳にかかる。息がかかってぞくぞくする感覚が、ちんこを揉まれているせいか、快感みたいに感じてしまい躰が震える。
「ふっ……、くそっ……。んっ……。わっ! そんなとこ、女じゃねえんだから……!」
 シャツの中に邦雄の手が入ってきて、乳首を触ってきた。そんなところ触られるのは初めてで、触られたくなくて身を捩ると、邦雄がぎゅっと乳首を摘んできた。
「いったっ!」
「痛くない。ここも気持ちいいんだよ? ほら、くにくにしてると硬くなってきて、もっと触ってって言ってるみたいになってる。きっと赤く充血してきて、可愛い乳首になってるんだろうな」
 耳元でぼそぼそ喋る邦雄に、乳首なんて感じるはずがないと思っているのに、乳首を摘まれたり、引っかかれたり、押しつぶされたりしているうちに、腰にくる快感が乳首から伝わってきた。
「やめっ、んっ、くそ……。はっ、あっ……」
 乳首を触りながら、もう片方のパンツの上から触れていた手がパンツの中に進入してきた。完全に勃ったちんこを直接触られ、いいところを心得た邦雄の手コキに鼻から抜ける声が出る。
「清晴、エッチ結構してる割には敏感だよね。いや、数やってるから敏感なのかな? それとも、女の子に触られることがあんまりないのかな? だから他人に触られることに慣れてなくて、敏感になっちゃってるとか?」
 オレの状況を冷静に観察している邦雄に腹が立つ。それより何よりも腹が立つのは、こんな状況に出さえ感じてしまう自分の快楽への弱さだった。
 こんなことをされて、普通は感じるわけがない。同じ男にちんこ触られて簡単に勃つなんて、みっともなくて泣けてくる。
「……っ、っ……」
「……ごめんな。泣かせたくなんてないんだけど、これで最後だから勘弁してね」
 そんな声を出すなら、やめてくれたらいいのに。言ったところでもう邦雄がやめることがないんだろうと思ったオレは、もうどうにでもなれと投げやりな気持ちで躰から力を抜いた。
 密着している邦雄は、オレが全身から力を抜いたことがわかったようで、拘束するように背後から抱きしめてきていた躰を離し、オレを再び仰向けに寝転ばせた。
「諦めるの、早いね。清晴の性格だから、無駄だとわかってても最後まで抵抗すると思ったのに」
「……うっせえ」
 背中で縛られた腕はそのままのため、せめてもの抵抗で顔を邦雄から背けて目を瞑った。
 小さい声で邦雄が何かを言ったようだったが、オレの耳にはその言葉は聞こえてこなかった。
 パンツごとズボンが膝まで下ろされる。
「……っ」
 外気に晒された下半身。カチャカチャと聞こえてくるベルトの音。邦雄がズボンを脱ぐ気配に、嫌な予感がオレの中を占めていく。
 オレは邦雄にやられてしまうのだろうか。これって、レイプだよな。男が男にレイプされても訴えられないんだっけか? そんなことをぼんやり考えながら、唇を噛みしめて時間が早く過ぎてくれるように祈った。
「……痛い思いはさせないよ。清晴は快感だけに身を任せて。すぐ、終わらせるから……」
「あっ、んっ……。んんっ!?」
 やんわりと刺激がちんこに与えられたと思ったら、手の平よりもはるかに熱いものをちんこに感じて、オレは思わず瞑っていた目を開いて下を見た。
「っ! あ、あつっ……、んんっ……」
「ふっ、はは、ホントに、ちんこって熱いね……」
 ちんこに感じた熱の正体は、邦雄の勃起したちんこだった。ちんこ同士が擦れている光景はなんとも奇妙で、温かい弾力に先走りが塗りこまれ、ぬちゃぬちゃと音がする。
 邦雄の両手で包まれた二人分のちんこは、邦雄が手を動かすたび、腰を動かすたびに裏筋が擦れて、剥き出しになったピンク色の二つの亀頭がぬるぬる動いていて、ぎゅっと邦雄の手に力がこもると、締めつけられる感覚に腰が震えた。
 授業中の屋上には、外で体育をしているどこかのクラスの声と、道路を走っている車の音、そして、オレと邦雄の息づかいと、擦り合わされているちんこから流れる先走りの音が混ざって響いている。
「くっ、んっ……あっ、はっ……」
「ふっ、んんっ……。んっ……あ、もうイきそう……」
「あっああっ……、っ……」
 荒くなっていく息の中で、呟いた邦雄の手と腰の動きが早くなっていく。
「はぁっ、あっ……あっ、……んんんっ――!」
 強い快感に、邦雄と同様限界が近くなっていたオレのちんこは、与えられた強い刺激に耐えることができず、邦雄の手の中に精液を放った。
「あっ、やめっ、んんんっ!」
「もちょっと、我慢して……」
 オレの出した精液のせいで滑りのよくなった邦雄の手が、ちんこを擦っていく。イった後もとめられることのない刺激に、オレは痛みに近い快感に頭を振って耐えることしかできなかった。
「んんっ、んっ、あっ、あ……」
「っ、くっ、あっ……。ああっ――!」
 しばらくして、掠れた声を出しながらオレの精液で汚れていた手の中に重ねて、邦雄が精液を放った。
 邦雄は萎えていくちんこを握ったまま息を整え、オレと邦雄が出した精液を片手で弄りながら眺めていた。
 息も整い、快感の余波も無くなったオレは冷静になった頭で邦雄を睨みつける。