その感情
2
シンプルなデザインだが、中々鮮やかなTシャツだった。
実は、華倉も一目で気に入っていた。
魅耶と同じ意見だという事が、嬉しくてつい笑ってしまう。
じゃあこれと、とそのTシャツを籠に入れて、次に進む。
そんな事を暫くして、会計を一旦済ませた時、不意に華倉を呼ぶ声がした。
勿論、裕である。
ちょっと見てこれ、といつの間にか華倉の隣に居て。
「これ似合うんじゃない?」
と、見せてきたのは、カッコ良いデザインのシャツ。
う、と思わず魅耶も「似合う」と思ってしまった。
センスは悪くないな、といつもと違い、華倉の反応も良くて。
おや、と裕の後ろからそれを見ていた浅海が声を漏らす。
その彼の声に、魅耶がはっとした。
駄目です、と慌てたように口を開く。
「残念ですが、華倉さんは青系統より赤系統の方がお似合いなんです」
「はぁ?」
ああ、と魅耶のそんな言葉にふと納得する華倉。
確かにこの前、菱人に見立てて貰った服も、赤系統が多かった。
そんなん分かんねぇじゃん、と裕も抗戦モードに入った。
華倉青似合うよ、と笑って言ってくる裕。
しかしそれに魅耶が反対して。
店だという事を忘れているのか、騒ぎ始める。
あーあ、と浅海くん、見てないで止めて下さい。
華倉も華倉で、こうなった二人の間には入れない。
冷や汗を掻きながら、ただ見ている。
そんな二人から一旦目を離し、ん、と浅海が一つの服に目を留める。
「間取って紫とか良いんじゃない?」
「混ぜてどうすんだよ」
ひょい、とその服を持って言ってみる浅海に、華倉のそんな一言が入った。
しかしその声で、魅耶と裕の言い争いが収まったのでした。
簡単に昼食も終え、次、と階を変える4人。
つうかいつまで一緒に居るの、と華倉が裕と浅海を見て言う。
悪いね、と浅海は言うが、裕は本当に嬉しそうにしている。
ああ、魅耶が微かに嫉妬してる。
かあいい。
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