その感情

 シンプルなデザインだが、中々鮮やかなTシャツだった。
 実は、華倉も一目で気に入っていた。
 魅耶と同じ意見だという事が、嬉しくてつい笑ってしまう。

 じゃあこれと、とそのTシャツを籠に入れて、次に進む。
 そんな事を暫くして、会計を一旦済ませた時、不意に華倉を呼ぶ声がした。
 勿論、裕である。
 ちょっと見てこれ、といつの間にか華倉の隣に居て。

「これ似合うんじゃない?」

 と、見せてきたのは、カッコ良いデザインのシャツ。
 う、と思わず魅耶も「似合う」と思ってしまった。
 センスは悪くないな、といつもと違い、華倉の反応も良くて。

 おや、と裕の後ろからそれを見ていた浅海が声を漏らす。
 その彼の声に、魅耶がはっとした。
 駄目です、と慌てたように口を開く。

「残念ですが、華倉さんは青系統より赤系統の方がお似合いなんです」
「はぁ?」

 ああ、と魅耶のそんな言葉にふと納得する華倉。
 確かにこの前、菱人に見立てて貰った服も、赤系統が多かった。
 そんなん分かんねぇじゃん、と裕も抗戦モードに入った。

 華倉青似合うよ、と笑って言ってくる裕。
 しかしそれに魅耶が反対して。
 店だという事を忘れているのか、騒ぎ始める。
 あーあ、と浅海くん、見てないで止めて下さい。

 華倉も華倉で、こうなった二人の間には入れない。
 冷や汗を掻きながら、ただ見ている。
 そんな二人から一旦目を離し、ん、と浅海が一つの服に目を留める。

「間取って紫とか良いんじゃない?」
「混ぜてどうすんだよ」

 ひょい、とその服を持って言ってみる浅海に、華倉のそんな一言が入った。
 しかしその声で、魅耶と裕の言い争いが収まったのでした。





 簡単に昼食も終え、次、と階を変える4人。
 つうかいつまで一緒に居るの、と華倉が裕と浅海を見て言う。
 悪いね、と浅海は言うが、裕は本当に嬉しそうにしている。
 ああ、魅耶が微かに嫉妬してる。
 かあいい。