雅臣と輝紀

ある日の雅臣

※高校生※


 ……俺の上に、いつもより積極的な君がいる。
 普段の君からは全く想像がつかないくらい艶やかで、俺は思わず君に酔ってしまいそうになる。
 淫らに揺れる君を見て、俺の全ては君の虜になったみたいだ。
『ま…さ……』
 俺の名前を呼ぶ声も、
『……ん……ぁっ』
 喉を反らせながら喘ぐ君の声も、何もかもが普段とは全く違う。
『あ…も……。まさおみ……』
『いいよ、輝紀──』
「何が『いいよ』だ、この大馬鹿野郎!!」
「いでっ!!」
 雅臣は輝紀に後頭部を殴られ、その場に突っ伏した。
「何すんだよー!」
 雅臣は後ろ頭をさすりながら、後ろにいる輝紀を見上げた。
「お前がそれを言うか!」
 輝紀は頬を朱に染めながら大声で怒鳴ると、雅臣が手に持っていたものを取り上げて、それで雅臣の頭を殴った。
「ちょっ! 暴力反対!」
「うるさいっ! お前は、これで、一体、何を、してたんだ!?」
 雅臣から取り上げた、二人に似ている二体のパペットを雅臣の目の前に突き出して、輝紀は訊いた。
 それを聞いた雅臣はそのパペットを取って、
「何って、こうやって……」
 言いながらパペットを先程と同じように持ち、
「模擬予行演習?」
 と、半疑問形で答えた。
「アホかー!! なんの演習をしてるんだ!? しかもなんで疑問形なんだよ!?」
 雅臣の答えを聞いた輝紀は、拳を震わせて今にも雅臣に殴りかかろうとした。
「わっ! ちょっと輝紀、落ち着いて!!」
「これが落ち着いていられるかぁぁぁ!!」
「謝るから静まってください!」
 雅臣は輝紀の両腕をなんとか塞ぎながら必死に謝った。
「──っ! こんなもの付けたままで俺に触るなぁぁぁ!!」
「ぉぶっ!!」
 輝紀の腕を掴んでいる雅臣の両手には、パペットがはめられたままだった。
 それを見た輝紀は思い切り雅臣の鳩尾に膝を入れると、うずくまる雅臣を置いてどこかへ行ってしまった。
「て…る…き……」
 雅臣はそれだけ言うと、ばたっとその場に倒れた。
 もちろん、その両手にはパペットがはまったままだった。



【END】