雅臣と輝紀

浴衣

※高校生※


雅:輝紀、輝紀。ちょっとこっち来て。

輝:なんだよ。

雅:なあなあ、これ着て?

輝:……浴衣……?

雅:そう、浴衣。なんたって今日は夏祭り! だからこれを着て、祭りへレッツゴー!

輝:……女じゃあるまいし、なんで祭りに行くために浴衣を着なけりゃいけないんだよ。

雅:いーじゃん、風情で。

輝:面倒くさい。

雅:まーまー、そう言わず。面倒だったら俺が着せてあげるからさ。

輝:ち、ちょっ! やめろ! 勝手に脱がすな!

雅:はいはい、すぐ終わるから暴れない。

 ──数分後。

雅:おー。やっぱり似合うじゃん。

輝:………………。

雅:何? なんか不満でも?

輝:いや、別に、不満とかじゃなくて……。

雅:じゃなくて?

輝:浴衣……初めて着たからなんか変な感じ。

雅:うそ? 初めてなんだ? 嬉しいな〜。

輝:その気味の悪い顔やめろ。

雅:俺様の顔を見て気味が悪いとは、なんと失敬な輩だ!

輝:誰だよ。

雅:誰でもいーんだよ。それより、本当に嬉しいよ。

輝:何がだよ?

雅:だって、輝紀のいろんな『初めて』を、俺が経験させてあげられてるんだもん。

輝:…………。

雅:おやおや? なんで赤くなるのかな〜?

輝:あ、赤くなってなんかいない!

雅:素直じゃないねえ。ま、そこが輝くんの魅力なんだけどね。

輝:おかしなこと言ってんじゃない! ……それより、お前は着ないのか?

雅:何を?

輝:浴衣。まさか、俺一人だけこの格好ってわけじゃないよな?

雅:そんなわけないじゃない。もちろん、俺も着るよ。ちょっと待っててね、着替えてくるから。

 ──雅臣が部屋から出て数分後。

雅:おまたせ〜。

輝:…………。

雅:何? どうした、黙って俺のこと見つめちゃって?

輝:……いや、別に……。その…ただ……。

雅:?

輝:……何でもない![少し格好良いと思ったなんて、口が裂けても言えるか!]

雅:なあ、何でそんな真っ赤なんだよ〜?(ニヤニヤとした笑いが浮かんでいる)

輝:何でもないっての! 行くんだったらさっさとしろ!

雅:はいはい。

 やっぱり素直じゃないんだから。と、雅臣は思いながら、照れて怒りながら先に部屋から出て行った輝紀の後を、微笑みを浮かべながらついて行った。



【END】