雅臣と輝紀
文化祭
※高校生※
雅:輝紀、ゴスロリってどう思う?
輝:は? ゴスロリ?
雅:そう、ゴスロリ。
輝:なんで突然その話?
雅:い、いや、なんとなくー。(目を逸らす)
輝:……まあ、悪くはないと思うけどな。
雅:本当?
輝:ああ。……なんだよ、その目の輝きようは? お前、もしかして!?
雅:違うよー!
輝:まだ何も言ってないのに、どうして違うと言えるんだ?
雅:輝くんは、俺が輝くんにゴスロリの格好をさせようと思っているって考えたんだろう?
輝:その通りだけど。ていうか、輝くんはやめろ。
雅:いい加減慣れようよ。
輝:嫌なもんは嫌だ。それより、本当は何を言おうとしていたんだよ?
雅:ああ、それがね、今度学校で文化祭があるでしょ?
輝:あるな。三年は自由参加だから俺は出ないけど、確かお前は出るんだったよな。
雅:そうそう。
輝:で、うちらのクラスは喫茶店だろ? それでなんでゴスロリの話が出てくるんだ? ……て、まさか?
雅:たぶん、そのまさか。
輝:お前だけか?
雅:冗談! 男はゴスロリ、女は皆ロリータ。
輝:俺、その二つの違いがイマイチ分からん。
雅:俺もだけど、どこかが違うんじゃないか?
輝:ふーん。そんなことより、男のゴスロリ姿ってあまり想像したくないな……。
雅:たぶん大丈夫じゃない? 衣装作る奴が選んだ男子だけが着るらしいから。
輝:どんな衣装係だよ……。で、それにお前が選ばれたと。
雅:不本意ながら……。
輝:ていうかさ、それが衣装だって言うなら、俺がどう思おうが関係ないだろ?
雅:関係あるに決まってる! 輝紀が嫌がる格好なんて、俺は絶対にしたくない!
輝:文句言うなよ、仕方ないことなんだから。それに俺は、一言も嫌だなんて言っていない。
雅:まさか輝紀、そういう趣味!?
輝:違う!
雅:まあでも、輝紀だったらきっと似合うね。あまりごつくなくて線も細いし、それになんて言ったって俺の輝紀だし!
輝:意味分かんねぇし! てか、なんで俺が着るのが前提!? 俺は絶対にそんな格好をするのは嫌だ!
雅:……その嫌だって格好を、俺は沢山人が来る中でするんですけど……?
輝:そ、そうだったな。悪かった。……でも、まあ……。
雅:輝紀?
輝:お前のゴスロリ姿、見てみたいかもしれない。意外と似合っていたりしてな。……お前一応イケてるし。(ボソリ)
雅:え? 何? もう一度!
輝:当日はお前の格好を笑いに行ってやるって言ったんだよ!
雅:そんなー、酷い! よし! 俺、輝紀に笑われないようにクラスの中で一番ゴスロリの似合う男になってやる!
輝:……アホが。
文化祭当日、宣言通りにバッチリ衣装を着こなした雅臣のクラスの喫茶店は大繁盛で、陰でこっそりと雅臣の写真を撮る女子が絶えなかった。
その光景を目にした輝紀は、ヤキモチを妬くどころか、ゴスロリさえ似合ってしまう雅臣に見惚れてしまったとかそうでないとか……。
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