雅臣と輝紀

選択

※高校生※


雅:輝紀、質問です。A〜Dの中でどれがいいですか?

輝:どれもやだ。

雅:え? ちょっと、それくらい答えてくれてもいいじゃない?

輝:絶対変なこと考えてそうだから嫌だ。

雅:大丈夫! 別に変なことじゃないから!

輝:……ホントかよ。

雅:ホントホント。

輝:[ウソくせー]……じゃあ、C。

雅:分かりました! じゃあ、行こっか?

輝:はっ? ちょっ、何!?(雅臣に腕を掴まれ立たされる)

雅:これから一緒に風呂〜。

輝:何で!?

雅:輝紀が『C』って答えたから。

輝:おい、ちょっと待て! 『C』ってのは、風呂に入ることなのか?

雅:そう。

輝:一緒に?

雅:そうそう。

輝:なんだそれ……。

 なんだかんだ言っているうちに、脱衣所に到着。輝紀の服を脱がせ始める雅臣。

輝:……おい。ちなみに他のはなんだったんだ?(抵抗するだけ無駄だと思い、やりたいようにさせている)

雅:んー? Aは『一緒に買い物に行く』で、Bは『一緒に料理を作る』、Dは『一緒に寝る』でしたー。

輝:最初の二つはまあいいとして、最後の二つはなんなんだよ。(ため息)

雅:だって、最近触れ合いが少なかったじゃん? だから、俺寂しくって。

輝:全然寂しそうには見えなかったけどな。

雅:それを表に出さないのが、本当のいい男って奴さ。

輝:……最近お前は夜、どこに行ってた?(ボソリ)

雅:え……と?(ふいっと目を逸らす)

輝:おーい、雅臣君? なんで目を逸らすのかな? 俺何かヤバいこと訊いたりしたかなあ?

雅:て、輝紀……。キャラが違う……。恐いです。

輝:そんなことはどーでもいいんだよ。で?答えは?

雅:……その、お、お呼ばれに……。

輝:ほう?

雅:…………。

輝:お呼ばれか。そうですか。ふーん。それならいいんですけれど。

雅:……ごめんなさい。

輝:何を謝ってんのかな?

雅:俺は嘘をつきました。お呼ばれではなく……。合コンに行ってました……。

輝:へえ、合コン。やっぱり。

雅:言い訳はしません、ごめんなさい。

輝:別に、いいんだけど?

雅:て、輝紀、目が据わってる……。

輝:そのくせ、どの口が寂しいなんて言うんだろうなあ?

雅:……。(汗が頬を伝う)

輝:俺は別に、合コンに行ったからってどうこうとは言わないけどな。

 輝紀は脱がされた服を身につけ、雅臣を睨む。

輝:嘘をつく奴を許すほど寛大ではないんでな。

雅:て、輝紀! マジごめんなさい!

 静かに脱衣所を後にする輝紀に、雅臣は必死に謝りながら輝紀の後を追う。

輝:……バカが。

 輝紀は一言呟きながら、追ってくる雅臣を一瞥した。
 その顔に微かに笑みが浮かべられていたのは、輝紀しか知らないこと。



【END】