雅臣と輝紀
泣かないでよハニー
※高校生※
「泣かないでよ? 俺の大事なハニー」
雅臣は輝紀を背中から抱きしめながら、優しい声で言う。
「はい? 俺、泣いてなんかいないじゃん。つか、ハニーって何だよ」
背中に雅臣の体温を感じながら、輝紀は冷静にツッコむ。
「泣いていないのは分かっているよ」
「……? お前、どっかに頭ぶつけた?」
『ハニー』の部分は軽くスルーされたが、輝紀はいつもの戯れ言だろうと思い、雅臣の頭を触りながら訊く。
「ぶつけてない。俺は正常」
「そうだな。お前の正常は普通じゃないもんな」
「……それは酷いよ?」
輝紀の容赦のない言葉に、輝紀の肩口に顔を埋める雅臣。
「そんなのどーでもいい。泣かないでとか、いきなり何なんだよ?」
「……輝紀が、今にも泣いちゃいそうな顔してたから」
「何言ってんだ? 俺は、そんな顔していた覚えはないぞ?」
肩口に顔を埋めながら言う雅臣に、輝紀はくすぐったさに少し身を捩りながら、眉根に皺を寄せて言う。
「輝紀が気づいていないだけだよ」
雅臣は低く囁き、輝紀の首筋にキスをする。
「っ!? やめろよっ」
「泣かないって、約束してくれる?」
「っ! 意味が、分かんねえっ」
赤い鬱血が残るほど強く吸われ、輝紀は声を上擦らせながら雅臣から逃れようとする。
「──っ!」
耳朶を甘噛みされ、舐められ、躰から力の抜けた輝紀は、雅臣の胸にもたれ掛かるような形になった。
「輝紀が泣いていいのは、セックスの時だけだよ」
「ふざ…けるなっ!」
「ぐっ」
雅臣の手が輝紀の服の中に入ってきた所で、輝紀は気力を振り絞り雅臣の腹に肘鉄を食らわせた。
肘鉄をまともに食らい、雅臣は輝紀から離れ腹を抱える。
「ったく、お前はいったい何がしたいんだよ?」
「俺は、ただ、輝紀にいつも元気でいて欲しいから……」
「……はぁ」
「呆れた?」
「まったくだ」
「……ごめん?」
「疑問形かよ。でもまあ、いいよ。……心配してくれて、ありがとうな」
「輝紀……。大好きだー!」
「っつ!? 抱きつくな!」
本当は雅臣が言った通り、少しだけ泣きそうだったけど、まさか雅臣が気づいているとは思わなかった。まったく、こいつは変な所だけはカンがいいんだから……。
輝紀は雅臣の力強い腕に抱かれながら、少しだけ微笑み思った。
【END】
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