雅臣と輝紀

約束なんだからね

※【一緒なんだよ】の続き※


雅:今度こそ、ちゃんと話をしよう。

輝:……もういいよ。マジしつこいから。

雅:そんなこと言っちゃイヤ! ちゃんと話そう? 大っ事なことなんだからさ!!

輝:というか、いつもお前が話を横道にずらしてんだろう? 俺のせいじゃないんだから、俺が責められるいわれはないな。

雅:ちょっとちょっとちょーっと待って! 一番最初に話を逸らしたのは輝紀の方でしょうが! あんなボケをかましておいて、今さら忘れたなんて言わせないんだから!

輝:言っておくが、俺は別にボケて言ったわけじゃないからな。ただ純粋に疑問に思ったから口に出したってだけであって……。

雅:ストップ! もうこれ以上言い争うのは止めよう!? 俺たち恋人同士なんだよ? 穏便に話し合いをしようよう?

輝:いつ言い争いをした? ただ普通に話していただけだろうが。お前の頭の中はどういう構造をしているんだよ。

雅:俺の頭の中はいつでも輝紀のことでいっぱいだから。

輝:そんな話をしているんじゃないだろう。

雅:……そうだった! 忘れる所だった!

輝:お前が言い始めたことなのに、自分で脱線してどうするんだよ。

雅:いやー、ついね。

輝:……アホが。

雅:何か言った輝紀?

輝:あ? 何も言っちゃいないぞ? 空耳じゃないのか?

雅:そう?

輝:そうそう。で、何の話をしていたんだっけ?

雅:……輝紀、俺たちの間に愛はないの?

輝:そういうの関係ないんじゃないのか?

雅:あるでしょ。めちゃくちゃ関係あるでしょ? ないと思っちゃう輝紀って、俺のこと愛していないの? そうなんだ。きっとそうなんだよ! そうじゃなきゃ俺たちが何の話をしていたのかを忘れるわけないでしょ!?

輝:……お前がそういうことを言い始めるから話が脱線するんだろ。

雅:関係な……くないのか?

輝:ようやく自覚したか。(腕を組みながらうんうんと頷き雅臣を見る)

雅:んー! もう! 話し続けよう! いつ引っ越そう!?

輝:いきなりそっからかよ!

雅:そういうもんでしょ。

輝:……そうかよ。(もはや諦めたのか腕を組んでいたのを解き頬杖をつきながら雅臣の顔を見ながらため息をつく)

雅:本当に重要なことなんだから、そんな面倒くさそうな顔しないでよ。悲しくなってくるじゃん。(めそめそとした顔をしながら輝紀の肩に手を置く)

輝:そんな顔するなよ。俺が悪かったから泣くな。……うざいから。

雅:輝紀さ、自分が一言多いって自覚ない?

輝:ああ? 何か言ったか?

雅:いいえ。何も言っていません。(目の据わった輝紀を見て、慌ててフルフルと首を振りながら輝紀の肩からさり気なく手を離し、ピシッと背筋を伸ばし輝紀から目を逸らす)

輝:……で、いつにするんだ。

雅:え?

輝:俺はいつでもいいぞ。

雅:て、輝紀、それって一緒に住んでくれるってことなの!?

輝:なんだよ今さら。何でそんなに驚くことがあるんだよ。

雅:いや、だって、そんなに快諾してくれるなんて、俺、想像もしてなかったからさ。

輝:俺を何だと思っているんだよ。一応俺はお前の……恋人なんだからよ。

雅:……輝紀!!!!(輝紀の言った単語がとても嬉しかったらしく、ガバッと輝紀に抱きつき)好き、大っ好き輝紀!!

輝:な、何だよ! やめろよな!(頬を摺り寄せてくる雅臣に、表面的には見えないがとても照れながら雅臣を押しはがそうとする)

雅:嬉しい。嬉しいよ!

輝:そんなに喜ぶことかよ。

雅:これが喜ばずにどうするよ!ここで喜ばなかったらいつ喜べばいいって言うのさ?

輝:お前はいちいち大袈裟すぎるんだよ。

雅:輝紀は淡白すぎるんだよ。

輝:俺が普通だっつの。(ようやく雅臣を剥がすと、ため息をつきながら雅臣をジッと見つめる)

雅:で、どうしよう。なるべく早い方がいいよね?

輝:いいよねって言われても、俺はいつでもいいって言ったじゃないか。

雅:そんないけずなこと言っちゃいや! こういうことは二人で決めるのがいいんじゃないのさ。

輝:じゃあ、早く帰って引越しの用意をすればいいんじゃないのか?

雅:輝紀、手伝ってくれないの?

輝:手伝って欲しいのか?

雅:そりゃ、まあ……。

輝:そんなに?

雅:もしかして、やる気なし?

輝:だって、面倒くさいし?

雅:輝紀! 愛! 愛を俺にください!!

輝:うるさいって。

雅:うるさいくらい言わないと、輝紀聞いてくれないじゃない?

輝:それはそうかもしれないが、そこまで言うほどじゃないだろ。

雅:いんや。

輝:……いやに素直だなお前。

雅:あは?(肩を竦め小首を傾げながら笑って誤魔化そうとする)

輝:お前がそういう風にしても気色悪いだけだぞ。

雅:はっきり言わないでよ。それか、言うんならせめて柔らかい言い方にするとかさ、他に言いようがあるでしょうが。

輝:ないな。

雅:即答するんじゃなくて、少しは考えてくれないかな。

輝:俺は素直なだけだ。

雅:素直なのはいいことだよ。

輝:だろう? だから早く帰れ。

雅:……ええ!? ちょっと、どうしてそうなるの?

輝:俺の素直な今の気持ちだ。(そう言いながら立ち上がる)

雅:ちょっ! どこ行くの輝紀?

輝:腹減ったからコンビニ。(財布と携帯を手に持ち、玄関に向かう)

雅:ちょっと待って!(輝紀の後に倣い立ち上がる)

輝:早くしろよな。

雅:待ってってば!

輝:ついでにお前の家に寄って少しだけ荷造り手伝ってやるよ。

雅:え?

輝:俺の気が変わらないうちに早くしろよな。

雅:て、輝紀!! 愛してる!!!!

輝:うっさい! 近所迷惑だ!

雅:ずっと愛し続ける! 俺には輝紀だけだよ! もちろん、輝紀にも俺だけだからね!!

輝:いい加減にしろよな。同居話、なかったことにするぞ。

雅:いや! それは絶対にいや! それに、同居じゃなくて『同棲』って言って?

輝:……何食おうかな。

雅:てーるーきー。


 二人は輝紀の部屋から出ると、手を繋ぎながら雅臣の家に向かって歩いて行った。



【END】