雅臣と輝紀

策略

※大学生※


輝:雅臣、酒、買いに行かね?

雅:え? いきなりどうしたの輝紀? 輝紀って酒飲む人だっけ?……というか、飲めるの?

輝:お前、何気に失礼だな。俺だって飲めるっての。

雅:だって、輝紀が飲んでるところ、俺見たことないんだもん。

輝:そういうお前だって。お前が飲んでるところ、俺は見たことないぞ?

雅:……俺、あんま飲めないから。

輝:そうなのか? 俺のイメージだと、平気な顔してどんどん飲みそうだと思っていたんだがな。

雅:それを言うなら、輝紀だってそう見えるし。

輝:俺は、普通だと思うぞ?

雅:輝紀、今まで何回飲んだことあるの? 俺のいないところで飲んでるってことは……はっ!?まさか、浮気!?

輝:(雅臣をごつく)どうしてお前の思考回路はすぐにそこに直結するんだよ?

雅:て、輝紀。いつもより痛いんだけど……。

輝:お前がありもしないことを言うからだろうが。自業自得だ。……俺のこと、そんなに信用してねえのかよ?(心なしか寂しそうな表情を作る)

雅:そ、そんなことないよ! 俺は輝紀のこと、すっごい信用してるもん!!(輝紀の顔を見て慌てた様子で輝紀の手を取る)

輝:じゃあ、何でそんなこと言うんだよ。俺が浮気なんて、するはずないのに……。そんな言葉が簡単に出てくるなんて、お前は俺のことを、ちゃんと信用してないって証拠じゃねえか。……俺は、悲しい。

雅:て、輝紀!?[どうしちゃったんだ輝紀!? いつもとだいぶキャラが違いすぎるんだけど!!??](戸惑いすぎ、握っている輝紀の手に力がこもる)

輝:雅臣、手、痛い。

雅:ご、ごめん!(輝紀に言われ、パッと手を離す)て、輝紀、本当にゴメンネ。俺、輝紀のことを悲しませちゃって。最愛の恋人を疑うなんて、俺は最低だ。何回謝っても、輝紀の心が晴れることなんてないよね。

輝:[お、思ったよりも真剣になりやがったこいつ。何か、逆に罪悪感が……]本当に、悪いと思ってるか?

雅:うん。

輝:ちゃんと、心の底から、そう思ってるのか?

雅:うん。

輝:もう二度とそんなことは言わないと誓うか?

雅:……うん。

輝:何だよ、今のその妙な間は。

雅:ご、ごめん。

輝:……はぁ。

雅:ごめんってば輝紀!!

輝:……別に、何も言ってないだろうが。

雅:だって、明らかに怒ってるため息だったじゃん。それに、輝紀は黙ってる方が怖いし。

輝:別に怒ってねえよ。

雅:本当に本当の本当!?

輝:しつこい!(まだ何か言いそうな雅臣の口を手で塞ぐ)

雅:うーうーうー。

輝:このままじゃラチあかなくなりそうだし、ますますややこしくなりそうだから、とりあえずコンビニ行くぞ。(真剣になりすぎていた雅臣に内心焦りながら、それを隠すように言う)

雅:うー?

輝:酒、おごれ。それで許してやるよ。

雅:(輝紀の手を掴み、自分の口から剥がすと)ありがとう輝紀!!

輝:じゃ、行くか。

雅:うん!


 輝紀が立ち上がると、それに続き雅臣も財布を持って立ち上がった。
 もちろん、輝紀の手には財布はなかった。


輝:[おごらせようと思って、あの展開まで持っていったが、ここまで上手くいくとは思わなかった……。今さらだが、雅臣はかなり単純なのか?]


 輝紀は嬉々と歩いている雅臣の横顔を眺めながら、はめたのは自分であるにもかかわらず、少し雅臣が哀れに思えてしまった。



【END】