雅臣と輝紀
思惑
※【策略】の続き※
雅:輝紀、何飲むの?(目的地であるコンビニに着き、手に籠を持ちながら問いかける)
輝:うーん、そうだな。(悩みながら酒の陳列されている場所まで行き)じゃあ、適当にコレとコレ。(日本酒の一升瓶を二本手に取り、雅臣の持っている籠の中に入れる)
雅:輝紀、こんなに飲むの?
輝:お前が飲むんだよ。
雅:え!? 俺、あんま飲めないって!
輝:飲め。
雅:め、命令ですか……?
輝:あとは……。(雅臣のことを軽くスルーし、酒とつまみを適当に見繕い、どんどんと籠の中へと入れていく)
雅:てるきー、無視しないでよー。
輝:何だよ?
雅:だから、無視しないでってばー。
輝:俺がいつ無視をしたって言うんだ?(商品を一つ手に取り籠に入れる)
雅:今! すっごい今の話だからね!!
輝:あー、はいはいそうですか。つーか、公共の場なんだから、声を抑えろお前。(しっしと手を振る)
雅:てーるーきー。
輝:寄るな。
雅:うー。輝紀くんが冷たくて、俺は悲しいです。
輝:はいはい。(籠を左右に振り口を尖らせている雅臣を横目に見ながら、輝紀は商品を眺め続ける)
雅:泣いちゃうよ俺? いいの?
輝:俺に被害がこないなら泣いたっていいんじゃねえのか。
雅:そんな! 俺が泣いても輝紀は心配のひとつもしてくれないの?
輝:雅臣、つまみは?
雅:……輝紀、最近無視の腕を上げたよね。
輝:何わけのわかんねえこと言ってんだ。後はいいのか?
雅:……マジ、俺泣きそう。(そう言いつつも、籠の中に入っている物を覗き込み)じゃあ、鮭とばとか。(そう言いながら自らも二、三種類手に取り籠に入れる)
輝:チョイスがおやじ臭い。
雅:好きなんだから放っといてちょうだい!
輝:オネエ言葉使うなよ、気色わりい。で、後は、いいのか?
雅:……うん。(多少涙ぐむ)輝紀は?
輝:俺はもういい。
雅:……あ!(涙を浮かべていた顔をパッと輝かせながら、何かを思い出したらしく声をあげる)
輝:何だよ? 何か買い忘れか?
雅:えーとね。(急に声を潜め、輝紀に耳打ちをする)
輝:……お前な。
雅:丁度なくなってたし、ついでに、ね? 使うかもしれないじゃん。
輝:……お前は切り替えが早すぎて、たまに俺は感心するぜ。後、呆れすぎて言葉もでねえ。
雅:まあまあ、そう言わないの。必要な物には変わりはないんだから。(それまで落ち込んでいた姿はどこへやら。ニヤニヤと雅臣は言うと、呆れ果てている輝紀をその場に残し、籠にもう一つ商品を入れ、レジへと向かって行った)
輝:あいつは、恥ずかしくはねえのか? つーか、馬鹿か?(小さく漏らすと、レジで精算をしている雅臣の元へ向かう)[まあ、今日この後必要になるもんだし、買っておいて損はねえだろうが……]
雅臣の隣に立ち、袋に詰められていく品々を眺めながら、輝紀は一人、少しだけ口の端をあげてほくそ笑む。その様子を雅臣は知る由もなかった。
輝紀が雅臣の元に着いた時、レジをしているコンビニの女性店員が、一つの商品を紙袋に入れながら、チラッと雅臣と輝紀の方を見た。丁度その視線は輝紀とかち合い、女性は慌てて視線を逸らすと、多少急いだ動作で袋詰めを続ける。その耳が心なしか赤くなっているのに気づいた輝紀は、……やっぱちょっと恥ずかしいかも。と思ってしまった。
輝紀は何だか女性店員に悪いことをしてしまったかのように思いながら、レジ袋に詰められたつまみ類を手に持ち、雅臣よりも先に店を出て行った。
会計を済ませ、残りの袋を手に持った雅臣は、すぐに輝紀に追いつくと、彼の横に並んで共に帰路に着く。
二人は家に着くまで他愛のない会話をしながら、真っ直ぐに輝紀の家を目指して歩いた。
この後どのような展開が待ち受けているのか、それを知っているのは輝紀のみであった。
【END】
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