雅臣と輝紀

しつこく愛して

※大学生※


雅:てーるきくーん!

輝:なんだ? 今日はやけに上機嫌じゃないか。気色悪い。

雅:ち、ちょっと酷くない? もうちょっと違う言い方とかあると思うんだけど……。(しょんぼりと肩を落とす)

輝:……じゃあ、きも――。

雅:いい! 結構! それ以上言わないで! もっと傷ついちゃうから止めて!

輝:やめろ。手を離せ。(どさくさに紛れ抱きついてくる雅臣を自分から押し剥がす)

雅:もー。そんな邪険に扱わなくてもいいじゃん。恋人同士なんだか、恥ずかしがることないじゃん!

輝:俺は人にひっつく趣味はない。

雅:趣味とかそういう問題じゃないから! 輝紀は今日も冷たい! 悲しい!(両手で顔を覆い、悲しさを全身で表現する)

輝:……悪かった。すまない。申し訳ない。だからそのうざい行動を今すぐ止めろ。

雅:……輝紀さ、冷たいって言われる意味分かってる?

輝:お前みたいに馬鹿じゃないから分かってる。

雅:え! じゃあわざと!? わざとなの!? ならもっと酷い! 悲しいなんてもんじゃない! 俺辛い!!

輝:…………。(縮こまり、泣く真似をする雅臣を溜め息を吐きながら眺める)

雅:……慰めてくれないの?(顔を覆っている指の間から輝紀を見る)

輝:なんで?

雅:ひど! 俺がこんなに悲しんでるのに、なんでって! 輝紀は血も涙もないの!? 輝紀の冷血漢!! 悪党!

輝:……ガキかお前は……。(叫ぶ雅臣に盛大な溜め息を吐く)

雅:輝紀が慰めてくれるまで俺ここから動かないから!

輝:好きにすれよ。邪魔だと思ったら蹴るから。

雅:てーるーきー!!

輝:き、気色悪い……!(床をずりずりと這いながら足にすがりついてくる雅臣を足で押しのける)

雅:愛がー! 足りないー!!

輝:知るかそんなもん! だーもう! はーなーれーろー!

雅:愛してるって言ってくれなきゃ離れない!

輝:誰が言うか!

雅:じゃあ離れない! 維持でもしがみついてやる!(蹴ってくる輝紀の足に耐えながら、輝紀を見上げて宣言する)

輝:気持ち悪い! 気色悪い! しつこい!

雅:そんなこと言いながらも俺のこと愛してるって俺は知ってるんだからね!

輝:知るか!


 その後、輝紀と雅臣の攻防戦はしばらく続き、輝紀が折れることで幕を閉じた。
 結局雅臣がなぜ上機嫌だったのかは、輝紀は知る機会を得なかったのだった。



【END】