雅臣と輝紀
見ていてやるから★
※20歳くらいのお話※
〔輝紀視点〕
雅臣の発言に呆れてしまうのはいつものことだ。だが、今回あいつの口から言われたことは、今までのものを遥かに越えて呆れてしまった。
馬鹿は死なないと治らねえんだよな? それならマジ、いっぺん死んでくれればいいと思う……。俺は犯罪者になりたくないからやらないけど。
「輝紀ー。暇だからエッチしよ?」
休日の夜。俺がビールを飲みながら床に胡坐をかいてテレビを見ていると、雅臣が俺の背中に張りつきながら変態な発言をしてきた。
もちろん俺は無視をする。
「てーるーきー! 聞こえない振りしてるのは分かってるんだからねー。ねーねー、エッチ。エッチしよーよー」
暇だからヤろうとは、いったいどういう思考回路をしているんだこいつは。
視線をテレビの方にやりながら、雅臣の発想に心底呆れた。
ビールを一口煽り、つまみに手を伸ばす。もちろん雅臣など無視だ。ここで答えてしまったら雅臣の思う壺になってしまいかねない。
……別に、俺だってヤりたくないわけではない。だが、こういうノリのような形でするのは嫌だというだけで……。
「輝紀はオレのこと、好きじゃないの?」
テレビには視線をやっているだけで、番組の内容など頭の中に入ってきていない。そんな状態になっている俺に、雅臣が沈んだ声で聞いてきた。
どうしてヤるのに乗らないと好きじゃないという発想に至るのかは分からないが、おかしな誤解をし始めているらしい。
しかし俺は無視を決め込む。
これで雅臣があっさりと諦めてくれるとは思ってはいないが、相手をするのもバカバカしい。
「どこまでもオレを無視する気なんだね。……分かったよ、じゃあ諦める」
まだごねて何か言ってくると思っていたのに、いやにあっさりと雅臣が引いた。それを不審に思い、俺はようやくテレビから視線を外した。
「…………何やってる、お前……」
雅臣の方向を見て目に入ってきた光景に我が目を疑う。目を見開き、驚きのあまり手に持っているビールを落としそうになった。
「何って、輝紀が相手してくれないから」
「それでなんでズボンをくつろげる」
「ひとりでするために決まってるじゃん」
……本気で頭が痛い。何がどうしてそうなった。そういう考えに行き当たる雅臣は、ある意味で凄い奴だと思う。
ひとりでするというのは、もちろん自慰のことだろう。そこまで欲求不満だったのかと思うと同時に、なぜここでヤり始めるんだという疑問を浮かべる。
ヤるのなら一人になれるところでやれ。俺の目の前でそういうことをするな。
「……わざとか?」
「何が?」
問いかけた俺に、口許を緩ませながら答えた雅臣に確信する。
俺に見せつけるためにわざとここでヤろうとしているのだろう。誘っているという捉え方で、間違いないだろうな。
しかし、それで俺が乗るわけがないのは、雅臣も分かっているだろうに。
ということは、本当に溜まっているのか。そうなのか。猿か。なんだこいつは。
俺の視線が冷たいことに雅臣は気づいているはずだが、行為をやめようとしない。
……そっちがその気なら、俺にも考えというものがある。
俺は手にしていたビールをテーブルの上に置き、テレビの電源を切る。
「輝紀?」
俺の行動を見て、雅臣は期待に目を輝かせる。
しかし悪いな。俺はお前の期待には答えてやらねえよ。
「するなら全部脱げよ?」
「……え?」
「オナニー、するんだろ? 見ててやるから、全部脱いでやれよ」
「――っ!?」
俺の言葉に雅臣は声にならないほど驚いたらしい。俺も、自分がこんなことを考えるとは思っても見なかったから驚いているが、ちょっと楽しくなっていることも否定できない。
視線だけで先を促す俺。雅臣はだいぶ躊躇っているようだったが、俺が本気で言っていると理解したらしい。ズボンにやっていた手を離し、上を脱ぎ始める。
抵抗するかと思ったが、案外潔いものだ。俺から視線を逸らすことなく、雅臣は次々と衣服を脱いでいく。
……なんか、結構こういうのもいいかもしれない。徐々に裸になっていく雅臣を見て、興奮にも似た気分になってきていた。
すぐに上半身裸になり、すでに緩めてあったベルトを引き抜いてズボンを脱ぐ雅臣。靴下もゆっくり片方ずつ脱ぐ。
しかし、やはり雅臣にも羞恥心というものは存在しているらしい。最後の一枚、ボクサーブリーフを残し、助けを求める視線を俺に寄越してきた。もちろん、俺は助け船など出してやる気は毛頭ない。
「……まだ、一枚残ってるぞ」
表情ひとつ変えず雅臣が服を脱いでいくのを見ている俺がいるという特殊な状況下にあるせいか、膨らみ始めているボクサーブリーフ越しの雅臣のモノを見ながら続きを促す。
「て、輝紀、本気……、なんだよな……?」
「本気も何も、お前が最初にやり始めたことだろ? 俺はそれをただ見てるってだけだ」
「……輝紀がエスだ……」
雅臣だって、もう後には引けない状態になっているのは分かっているはずだ。これが、自分の行動がもたらした結果であるということもまた然り。
「やめるのか? もう、膨らんできてるくせに? 脱いでるところを俺に見られて、感じたのか?」
「恥ずかしいこと言わないでよ!」
「恥ずかしいことしてるヤツに言われたくない」
「……輝紀の方がもっと恥ずかしいことしてるじゃん」
「お前が脱いでるところを見てることを言ってんのか? もしそうなら間違いだ。俺は恥ずかしいなんて思っちゃいない。どっちかって言うと楽しい」
「本気でエスだ!!」
口許を上に吊り上げながら言った俺の言葉に、雅臣が涙目になる。
これくらいで恥ずかしがるなんて……。いつもの雅臣の言動の方が恥ずかしいと思うんだが、こいつはそういう自覚はないのだろうか。
俺の今の行動は、もしかしたら日頃の鬱憤晴らしという意味合いも含まれているのかもしれない。そんなことを思いながら、いっこうに下着を脱ごうとしない雅臣に近づいた。
「輝紀……?」
膝と膝がぶつかりそうな距離まで近づき、雅臣の内股に触れる。
「っ……!」
俺から触れてくることを予想していなかったのだろう。雅臣は大袈裟なほどに躰を揺らした。
「脱がないなら、そのまましろよ……」
内股を撫でる手を止めないまま、雅臣の耳元に顔を寄せて意識して声を低くさせて囁く。
耳元で喋られたことに、雅臣が息を飲んだのが伝わってきた。
いつも雅臣の好きなようなされているが、こういうシチュエーションも悪くない。というか、こっちの方が俺好みかも。
「ひとりでするんじゃなかったのか? それとも、俺の前でするのは抵抗あんのか?」
「そ、そういうわけじゃ……」
「なら、早くしろよ。俺、お前がするの見たくて待ってんだからさ……」
「……輝紀、見たいの……?」
俺の言葉に、雅臣はその気になってきたみたいだ。俺は顔と手を離すと、距離をそのままで雅臣の行動を見守る。
近い距離で見て分かったこと。雅臣の耳は赤くなっていて、目元もほんのりと色づいていた。その表情がエロイと思ったのは、俺だけの秘密だ。
しばらく俺たちは互いに見つめ合っていた。もう雅臣に先を促すことはしない。雅臣はやるだろうという確信を得ていたからだ。
案の定、少し経ってから雅臣は動き出した。
ボクサーブリーフに手をかけ、尻を浮かせて脱ぎ、足から取り去る。
雅臣のモノは、予想していたよりもその存在を主張していた。
「……輝紀、ちゃんと見ててよ……?」
雅臣はそう言うと、硬くなり始めていたモノに手を伸ばした。
俺は知らないうちに口の中に溜まっていた唾液を飲み込み、ジッとその様子を見つめる。
当たり前だが、雅臣の自慰を見るのは今回が初めてだ。今まで見たいと思ったこともないし、想像をしたこともなかった。なんというか俺は、雅臣は淡白な奴だと思っていたのだ。セックスだけで充分。ひとりでは別にしなくてもいい。などという勝手な印象を抱いていた。おそらく、自分ではあまりしないからそう考えてしまったのだろう。
しかし、雅臣の手は慣れている。自分のどこをどうすれば気持ち良くなれるのかを把握しているという手つきだ。
立ち上がり始めたモノを見ながら、感心すると共に自分の躰が熱くなってきたのが分かった。雅臣の自慰を見て……興奮、しているんだ、俺は。
「っ……、ふっ……」
手を動かしながら、小さく漏れる雅臣の吐息。
竿全体しごくようにしていた手を、先端に持っていく。
「んっ、……っ……」
最初こそは俺の目を見ながら自慰を始めた雅臣だったが、やはり羞恥心には勝てなかったようで今は目をつむって行為に没頭している。
手を動かしながら、その動きに合わせて歪む顔が、凄くエロイ。
雅臣は片方の手のひらで先端を包むようにして手を動かす。もう片方の手は先端の動きに合わせるように上下に動いていた。
完全に勃起した雅臣のモノ。水音が聞こえてきたところを見ると、先走りが出ているのだろう。
「……気持ちいいか、雅臣……?」
「ん、……気持ち、いい……」
下半身に溜まっている熱のように、雅臣の声にも熱が籠っていた。
俺の声を聞いたからなのか、雅臣の手の動きが大胆になっていく。
先端を弄っていた手を胸に持っていき、突起をつまむ。
竿をしごくリズムとは違うリズムで指を動かす雅臣。雅臣が胸も感じることは知っていたが、まさか自分でも弄るとは予想外だった。
「乳首も弄んのか、エロいなお前……」
「……ん、うる、さい……」
荒い息を吐きながら、俺の言葉を否定するように言う雅臣に、俺はあることを思いつき手を伸ばす。
「あっ! て、輝紀、何して……! んんっ!」
手を出すつもりはなかった。見ているだけのつもりだったが、我慢できなくなってしまったのだ。
伸ばした俺の手は、雅臣が弄っていない方の胸の突起に触れる。
人差し指の腹で突起を押し、捏ねるように指を回す。
俺の予想外の行動による刺激に、雅臣は目を見開き躰が小さく跳ねさせた。
ちょっとした俺の行動にも敏感に反応する雅臣が愛しい。もっと刺激を与えてやりたくなる。
「雅臣、俺が乳首を弄ってやるよ」
「や、やだ……」
「気持ちよくしてやるから、言うこと聞けって」
「……輝紀〜」
情けない声を出しながらも、抵抗しない雅臣。快感には従順なのだろう雅臣に、さらに俺は気分を高揚させていく。
雅臣は自ら突起を弄っていた手を離し、それを下に持っていく。そして俺は雅臣の両方の突起を弄り始めた。
「う、ぁっ……、ん……。……んん、っ……」
摘まみ、引っ張り、つねり、押し潰す。
力を込めたり緩めたりする俺の手に同調するように、雅臣の竿をしごく手がだんだんと早くなっていく。
上と下、快感を得られる場所両方を同時に刺激されていることにより、先走りがとめどなく溢れ出てくる。それを目にし、雅臣に限界が近づいてきていることを悟った。
「もうイくか?」
「う、ん……。イき、そう……。んっ……、はぁ……」
「じゃあ、イけよ……」
俺はそう言うと、片方で突起を弄ったままもう片方の手を雅臣の雄の亀頭に持っていく。そして、少し力を込めて親指でそこを刺激した。
「あっ、だめ……輝紀……! イ、く……、ん……うぁっ……!」
「ちゃんと見ててやる……」
言ってからキスをすると、最後の刺激とばかりに両手を動かす。
雅臣の舌を絡めとり、吸いつき、甘噛みする。胸の突起を強く抓り、鈴口を爪で引っかいた。
「んっ、ふっ、ん……! っ……、っ――!!」
雅臣の躰が大きく震える。それと同時に俺の手に雅臣の精が放たれた。
雅臣の精の感触を手に感じながら、口を離す。手にベッタリとついた白い液体を弄りつつ、雅臣に問いかけた。
「気持ちよかったか、雅臣?」
「……よかった、けど……」
「けど?」
「……酷い……」
精を放った余韻に頬を紅潮させながら、雅臣は口を尖らせて俺を睨んできた。
雅臣に睨まれることなど滅多にない俺は、珍しい雅臣の表情につい笑ってしまう。
「なんで笑うの!? もっと酷い! オレ、遊ばれてる!?」
「その感覚に近いかもしれないな」
「外道だ! 鬼畜だ! 愛されてない!!」
「愛してなきゃ、お前を見てこんなことにはならねえよ」
喚く雅臣の手を掴み、自分の股間に導く。
「――!」
導かれるままに俺の股間に触れた雅臣は、俺のそこの変化に目を見開く。そして嬉しそうに破顔した。
コロコロと変わる雅臣の表情に、俺もつられて笑みを深くする。
「オレを見て、こんなになったの……?」
「そうだよ。つか、揉むな」
ニコニコというよりはニヤニヤといった顔をして、存在を示している俺の股間を揉む雅臣の手を叩く。
完全に勃起しているわけではないが、刺激をされたらさすがになってしまう。
「嫌だね。揉むね。だって次は、輝紀の番でしょ?」
「俺にもひとりでやれってか?」
「いや。それもいいんだけど、それは次の機会にお願いします。今は、是非とも俺にやらせてください。……なんてか、これだし……?」
俺に叩かれても手を止めない雅臣は、少し照れながら視線を下にやる。それに倣い俺も視線を下にずらした。
「……元気だなお前……」
「まだまだ若いから、しょうがないよね」
今しがた精を放ったばかりだというのに、雅臣の雄はもう変化し始めていた。
何がスイッチになったのか。……俺の状態を手で感じて、なんだろうか。
素直な反応を見せる雅臣に、俺はもう抵抗の言葉は発しない。その代わりに、自分の服に手をかけた。
恥じらいもなく服を脱ぎ捨て、ズボンにも手をかける。
「輝紀、いつになくヤる気?」
「お前のあんな姿見せられたら、ヤる気なかったとしても自然となっちまうって」
「エロいね」
「どっちがだ」
「じゃあ、二人ともエロいと言うことで」
下着一枚になった俺に手を伸ばしながら、雅臣は笑う。
俺は雅臣のやりたいようにさせながら、自分の今の姿に雅臣同様笑った。
突拍子もない雅臣の行動。たまにはそれに乗ってみるのも、悪くはないのかもしれない。
そう思いながら、雅臣の手から与えられる刺激に身を任せたのだった。
【END】
…あれ?雅臣は攻めのはずなのに、なんでしょうこの受身は(笑)
もともとこの二人はどちらでもいい感じなのですが、自分で書いておきながらどうした!という!
久しぶりにエロを書いたせいか温いものになりました。
次はもっと違う形でできればいいと思います。
最後までお読みいだたきありがとうございました。
20130521
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