恋愛部成就課

報告書NO.01(2)

 勇実はキスを続けながら、部屋着である俺のジャージのファスナーを開け、前を寛げると、シャツの上から上半身をまさぐってきた。
 勇実の手が乳首に触れる。乳首は触れられれば芯を持つが、しかし何も感じない。それを勇実も悟ったのか、手が乳首から離れ、下へ移動していく。その手がどこへ向かっていくのかわかった俺は、躰を固くさせた。
「んぅ……っ」
 キスのせいでほんのりと熱を持ち始めていたちんこに、勇実の手が触れた。まだ柔らかいそこを、ふにふにと優しい力で揉まれると、むず痒いような気持ちいいような妙な気分になった。もどかしい感覚に、もっとちゃんと触って欲しいと思ってしまうが、そんなことを口に出して言えるはずがなく、キスに没頭しながら、躰をもぞもぞさせていた。
「ん……ちゅぅ……」
「は、ぁ……」
 キスから解放され、口の端から唾液が頬を伝って流れていく。大きく息を吐き、勇実を見つめる。
 勇実の顔は、俺の知らない雄のものになっていた。キスで勇実も体温が上がったのだろう、瞳が潤み、頬が上気している。唇は互いの唾液で潤いを与えられ、隙間から漏れている吐息が凄くセクシーだ。
 手を伸ばすと、勇実はビクリと肩を震わせたが、優しく頬に触れてやると表情を緩め、俺の手の平に頬擦りをしてきた。その仕草がとても愛おしいものに映り、そして腰にズンと衝撃がきた。
 ……これは、錯覚なんだろうか。勇実が可愛いし、格好いいし、とにかく特別に見える。
 抱きしめたい衝動にかられたが、勇実は俺の上からどくと、俺の膝の間に躰を移動させた。肘をついて上半身を軽く起こし、勇実の行動を目で追う。
 ジャージのズボンに手をかけ、ゆっくりと下ろしていく。それを俺は抵抗することなく、足を動かして自らもズボンを脱ぐのを手助けした。
 足から抜けたズボンは床に放られ、俺の下半身は勃起を隠すことのできないグレーのボクサーブリーフ一枚になってしまった。その布も、すぐに取り払われ、なんの妨げもなくなったちんこが空を仰ぐ。
「あ……んむ……」
「い、勇実!? うひゃ――!」
 軽く勃起している俺のちんこを見て、勇実はなんの躊躇いも見せず、それまでキスをしていた口の中へ、俺のちんこを導いていった。視覚的な衝撃と、ダイレクトに腰にきた衝撃に、思わず素っ頓狂な声を出してしまった。
 勇実の息遣いと、じゅぽじゅぽという唾液とカウパー液の混ざった水音が耳を犯していく。
「ん……んふ……、じゅる……んんっ……、んぁ……ちゅぅ……」
 勇実の口の中は、やけどしてしまいそうなくらい熱くて、ぬるぬるしていて、柔らかくて気持ちいい。勇実はフェラチオが初めてなのだろう、時々えずきながらもそれでも懸命に頭を動かしていた。
 その姿と、初めての快感に俺は耐えることができず、すぐにイってしまいそうになっていた。
「おい……、いさ、み……。くっ、も、イく……イく……」
「ん……。いいお……。んっ、んん……」
 いいよと言われても、さすがに口の中に出すわけにはいかない。そう思って勇実の髪をひっぱるが、勇実の動きが止まることはなかった。
「あっ、やめっ。おい、いさ……んんっ、っ……っ――!」
 止めてくれと言い続けたが、その言葉が逆効果になったのかさらにきつく吸われ、たまも揉まれ、目がチカチカするくらいの強い刺激に我慢できなくなり、あっけなくイってしまった。
「はあ、はあ、はあ……」
 イったせいで頭が一瞬白くなる。肘から力が抜け、背中を床につけて脱力した。荒くなった息を落ち着かせながら、勇実を見る。勇実は俺が口の中に出してしまった精液を手の平に吐き出し、なぜか眺めていた。
「勇実、何してんだ……?」
「……続き……」
 勇実は俺の質問には答えず、ティッシュ箱を手繰り寄せると、数枚引き抜き精液で汚れた手と口を拭った。そして、ティッシュをゴミ箱に捨てると立ち上がって寝室の方へ行き、何かを手に持って戻ってきた。
「なんだ、それ?」
「袋の中に一緒に入ってた」
 俺の問いかけにそっけなく答えると、勇実は自分のジーンズに手をかけて脱ぎ始めた。
「……明弘、目、瞑ってろ」
 俺がジッと見ていることに気づいた勇実が、ズボンを脱いでいる手を止め、目を合わせようとしないままに言ってきた。
 そう言われたとしても、目を離すことなんてできやしない。
 俯いたまま勇実はズボンを足から取り去る。三十になったというのに、その足に無駄な肉は一切ついておらず、健康的な肌の色に、筋肉の筋がわかる均整の取れた真っ直ぐな足が目の前に晒される。その足から、上半身も贅肉の一切ない引き絞まった肉体となっているんだろうということが、容易に想像できた。そして、躰の中心にある俺と同じ男の象徴は、その存在を主張していた。
 ネイビーのボクサーブリーフを脱ぎ去り、上にはパーカーを身に着けているだけの、俺と同じ、下半身だけが裸の勃起を隠せない姿になる。それは、はたから見たら滑稽な姿に見えるのだろう。しかし、この特別な状況で興奮している頭では、その姿がとても色っぽいものに映った。
 喉が鳴った。幼なじみの勃起ちんこを見て、俺のものにも再び血が集まっていくのを感じた。
 男同士での知識がほとんどない俺は、これから何が起きるのかわからない。俺がどうなってしまうのかもわからないというのに、嫌悪感よりもむしろ好奇心が強まってきていた。
 下半身裸の勇実は、俺の膝を挟んで膝立ちで座り、AVが入っていた袋と一緒に入っていたらしいボトルの蓋を開けて、透明な中身を右手に垂らした。
「……それって、もしかしてローションってやつか?」
「そう。初めて見るか?」
「ああ、まあ……」
 ローション。滑りをよくする物、潤滑剤。使い方はアダルトビデオで見たことがあるので、知識としては知っている。ドラックストアで目にしたことはあるが、手に取って見たことはないので、物珍しくてジッと勇実を見ていた。
 勇実は右手に垂らしたローションの粘度でも確かめるように、指で何度か弄ってから、その手を自分の尻の方に持っていった。
「んっ……」
 ローションの、ぬちゃぬちゃという粘着質な音が耳に入る。眉間に皺を寄せて、息を吐き出し、勇実は手を動かしていた。
 ……尻。見えないからよくわからないが、尻穴を慣らしてるのか? やっぱり尻を使うのか。というか、勇実の尻……。尻穴に、挿れる……?
「え!? 勇実! お前、初めてじゃないのか!?」
 躊躇いもなく尻穴を弄り始めている勇実に、一瞬それが当たり前の光景に映ってしまったが、そんなはずはない。もしかしたらという可能性もなくはないのだろうが、すぐに正気に戻ると、上半身を起き上がらせて勇実の腕を掴んで動きを止めさせた。
「そうだけど?」
「いやいやいや、そんな、なんでもないことみたいに言うなよ!」
 動きを止められて不服そうな顔をした勇実に、俺は焦った声を出した。
「初めてなら、もっとちゃんと準備とか要るんじゃないのか?」
「童貞のくせに、そういう知識はちゃんとあるのか。さすが、ああいうAVを見るだけのことはあるな」
「いやいやだから、それは何かの誤解で」
「手、離せよ。……痛くてもなんでもいい。お前の童貞、俺にくれ……」
 勇実はローションのついていない左手で俺の頬に触れ、顔を近づけると、耳元で低く掠れた声で囁いてきた。
 淫靡な熱を孕んだ声に、心臓とちんこがドクンと脈打った。顔と鳩尾の辺りが熱くなる。なんだこの、恥ずかしい感じ。キスされて、ちんこ銜えられてイかされて、今は目の前で勇実が尻穴弄ってるっていうのに、それらを体験したものとは違う種類の恥ずかしさが俺を襲ってきた。顔に変な力が入り、無意識に唇を噛んでしまう。
 勇実が離れる時に肩を押され、力の抜けていた俺は押されるままに背中を床につけた。再び尻穴を弄り始めた勇実を直視することができなくて、両手で顔を覆った。