恋愛部成就課
報告書NO.02 (2)
小さくなりきれない梅木の姿を見て、これ以上は触れないで話を終わらせようという気持ちと、真相を知りたいという気持ちがオレの中でせめぎ合っていた。
梅木を傷つけるようなマネはしたくない。そんなことをして嫌われたら、ショックなんて言葉じゃすまないくらい落ち込んでしまうに決まっている。
嫌われたくない。別れたくない。……でも、セックスするとこいつがいったいどんな風になるのか、すげー知りたい。
「……梅木、真相、知りたくないか?」
結局オレは好奇心を抑えることはできなくて、梅木に問いかけていた。
「へ……?」
「セックスすると、梅木がどうなっちまうのか、知りたくないか?」
「……へぁ……?」
梅木はちょっとだけ手をずらして、目だけを覗かせると、呆けた声を出しながらオレを凝視してきた。
「……? ……! ……ななななんで!? 俺の話、聞いてたよな!?」
「聞いてた。梅木が、本当にセックスって行為に嫌悪感を抱いてるってんなら、オレもこんなことは言わない。けど、別にそういうわけじゃないんだろ?」
「……そ、それはまあ、一般的な男子並みには、興味はあるけど、それとこれとは、話が違うというか、なんていうか……」
「少なくとも、梅木はオレとセックスしたい気持ちを持ってくれてはいるんだろ? だから、過去の話をしてくれたんじゃないの?」
「そうであるような、ないような……」
「ハッキリしろ!」
普段なら、梅木の曖昧な物言いに一喝することはないのだが、梅木を頷かせるためには、多少強引な手を使わざるを得ない。
「――は、はい! 本当は、海老名とセックスしたいです!」
案の定、梅木は姿勢を正してオレの欲しい言葉を言ってくれた。
「じゃあ、しようか」
口に出した言葉を覆させないため、素早く行動に移る。
小さい声で唸っている梅木の腕を取って立たせると、寝室に移動する。
これからすることに、梅木の躰はすっかりガチガチで、動きが油を差していないブリキみたいになっている。
「大丈夫、ダメだと思ったらちゃんと途中でやめてやる。怖いことなんてしないから、オレに任せて?」
梅木を安心させるために声をかけると、梅木は無言のまま頷いた。
ベッドの真ん中に梅木を座らせ、オレはその向かいに膝立ちになる。
目を泳がせ、唇を噛んでいる梅木の唇に指を這わせた。
「ん……」
どうしたらいいのかわからないのだろう梅木は、ジッとオレの目を見つめてきている。その瞳を見つめ返しながら微笑んでやると、梅木の肩から少し力が抜けたような気がした。
梅木の頬を優しく両手で包み込み、顔を寄せていく。
キスなんて、数え切れないくらいしてきたというのに、梅木とキスができることが嬉しくて、距離が近くなっていく程に心臓の音が大きくなっていく。
「ん……」
互いの距離がゼロになった。触れるだけのキスは柔らかく、梅木の熱くなっている体温を感じた気がした。
ゆっくりと唇を離し、近い距離で梅木を見つめた。
「ふっ。梅木、キスの時くらい、目、閉じたらどうなんだ?」
「あ、ご、ごめん。その、海老名の顔が、綺麗で、目が離せなくて……」
嬉しいことを言ってくれる。社交辞令なんかじゃない梅木の言葉で、胸が高鳴る。
「なあ、もっと深いキス、してもいい?」
「あ、ああ……」
「じゃ、あーん、ってして?」
「あー。ん……、んふ……」
素直に口を開いた梅木の口に、再び距離をゼロにして舌を差し込んだ。
舌と舌がくっついた瞬間、梅木がビクリと躰を震わせた。怖がらせないよう、安心させるように髪を撫でてやると、おずおずといった風に、梅木の腕がオレの背中に回された。
「んんんっ、ん……、んはぁ、あ……」
「ん……、ちゅっ。んん……、ん……ふっ……」
口の中をじっくり味わうために舌を動かし、梅木の唾液とオレの唾液を絡ませていく。梅木の舌をちょんとつつけば、こわごわとしつつも梅木が舌を絡ませてくれた。
「はっ……、あっ、んんぅ……んくっ……」
「ちゅ、んっ……、ふっ……んん……」
じっくりと梅木とのキスを堪能し、唇を離す。今度は閉じられていた梅木の目が開き、涙が溜まりとろんとした瞳がオレを映す。
「どう? 大丈夫?」
「ん……。息、苦しかった……」
梅木らしい感想に、小さく吹きだす。この調子なら、次に進んでも大丈夫そうだ。
「服、脱がすから手あげて」
「ん……」
上の服を脱がし、次いでズボンもパンツもすべて一気に取り払い床に放り投げた。
「おお……」
「な、何? なんか変なとこ、あった?」
「初めてお前の躰見たなと思って」
「そ、そうだっけ?」
付き合って一年近く経つといっても、ほとんど友達と同じ付き合い方をしてきたおかげで、梅木の裸体を目にする機会は一度もなかった。オレの目に映っているのは、想像通りの引き締まった腹筋に、逞しい胸筋。健康的な色の肌に、薄茶色の小さいつんと尖った乳首。そしてその中でも一番目を引くのは、存在を主張し始めている男の象徴だった。
「ちょっ! そ、そんなとこひっぱんなよ!」
梅木の裸を上から下へ舐めるように見てから乳首を軽く摘んでやると、梅木は手を交差させて乳首を隠した。
「痛かった?」
「い、痛いっていうか、鈍い感覚っていうか……」
「ま、最初はそんな感じだよな」
始めから乳首が感じるなんて思っていなかったので、梅木の手をどかすことはせず、今度は自分の服を脱いで一糸まとわぬ姿になった。オレの裸を見た梅木は、さっとオレから視線を逸らした。
梅木のウブな反応を見て微笑むと、梅木の肩を押して寝転ばせ、足を軽く開かせてその間に座った。目の前に広がっている光景は、実に絶景だ。
「触るぜ」
梅木に前置きをしてちんこに触った。軽く触れれば、梅木が息を飲んだ。反応を伺いながら、上下に扱いたり、亀頭を手の平で撫でたり、玉をふにふにと揉んだりと、梅木に快感を与えていく。
「ふっ……、んん……ん……」
勃起していく梅木のちんこを見ていて、オレの股間もうずうずしきた。乾いてきた唇を舐めてから、自分のちんこに手を伸ばす。
「……あ、海老名……」
「どした?」
「その、俺も、海老名の……」
「オレのちんこ、触りたい?」
「そそそ、その、そういう……」
「そう思ってくれんのは嬉しいんだけど、それはまた今度ってことで。梅木、その引き出しの中にローション入ってるから取ってくんね?」
オレの指差す方に首を回して、梅木はベッドボードについている引き出しを開けて固まった。
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