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不器用な表現
君の照れ隠しは、とにかく痛い。
「てめぇ!こんなとこで手を握ってくんじゃねぇ!」
俺がさり気なく手を取った時、君は照れたようにそう言って、俺の足に見事な蹴りを放ってきた。
「ぅっ……ひどい」
「てめぇが悪りぃんだよ!」
君の照れがものすごく痛いのは解っているんだけど、君の照れている顔が好きだから、俺は懲りずにちょっかいを出してしまう。
痛いのは好きじゃないけど、君になら何をされても構わない。でも君は、結構本気で蹴ってくるから、痛くてつい、うずくまってしまうことが度々ある。
そして今日も、情けながら痛みに悶えながらうずくまってしまった。
「お、おい。大丈夫か?」
俺を蹴ったのは君なのに、君は俺を心配してくれる。それも解っているから、たまにわざとこうしてみたりすることもある。
……でも今は、本気で痛い。
「だ、大丈夫だよ。元はといえば俺が悪いんだし」
「………………」
俺がそう言うと、君は無言で俺に手を差し伸べてきた。
初めてのその行動に驚いている俺に、君は、
「そんなに痛いんだったら、癪だが手を貸してやる」
と言いながら、俺の腕を引っ張って立たせて、俺を引くようにして歩き出した。
俺はそれがとても嬉しくて、君に解らないように笑みをこぼした。
君の照れ隠しは、とにかく痛い。
けれど、その後の君は、その痛みさえ忘れさせてくれるくらい、優しかった。
【END】
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