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表に隠された裏



 君はいつもとても強がっている。本当は誰よりも脆い心を持っているのに、それを隠すようにいつも表面を繕っている。それを見ると、私は凄く辛くなってしまう。
 私はいつでも君と一緒にいるのに、決して君は私に弱いところを見せないように振る舞っている。
 私といる時は、私の前ではそんなに強がらなくてもいいのに。君の弱い所も沢山、見せて欲しいのに……。
 その私の気持ちを伝えてしまったら、君はよりいっそう心を隠してしまいそうだから、私は言うことができないんだ。
 これ以上心を閉ざして欲しくはないけれど、今のままの状態も苦しい。
 一番苦しいのは、もちろん私ではなくて君。分かっているけれど、苦しいと、辛いと思ってしまう。
 君の過去がどんなものなのか、君のお兄さんに聞いて知っていた。君も、自分の過去を私が知ったことを知っている。
 しかしお互い、その話題にわざと触れることはしなかった。
 その話題に触れれば、もしかしたら何かが変わるかもしれない。君は私に、強がってばかりでなくなるかもしれない。
 沢山の『もしも』が私の中を廻っている。だが、ただ廻っているだけで、それを実行に移そうとしたことは一度もなかった。
 私には、後一歩という勇気が足りなかったのだ。だから、言うことができなかった。
 そんな状態で、もう半年以上が経とうとしている。
 私たちの関係に、特にこれといった変化は見られなかった。だが、ひとつだけ変わったことはあった。
 それは、君がたまに、本当にごくたまに私に弱音を吐いてくれるようになったということ。
 私はそれがとても嬉しかった。他人からしたらほとんど弱音には聞こえないようなものだけれど、私の前で強がってばかりだった君が漏らしてくれる言葉は、少しずつ私に勇気をくれる。
 君からもらっているこの勇気で、私も君に少しずつ触れていけたらと思う。
 もう、『もしも』などということは考えないことにした。そればかり考えているから、私は先に進めないのだ。
 君は少しずつ確実に進んでいるのだから、私もそれに習っていかなくてはならない。そしていつか、君の本心を見れる日が来ることを願っている。



【END】