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たった一人君に



 こんなに沢山人がいる中で、たった一人、君に出逢うことができたのは、偶然ではなく必然だったのかもしれない。
 お互いに性別は同じだけれど、強く惹かれ合っていることは事実だ。
 一目見ただけでお互いが恋に落ちる。
 そんなことは夢物語でしかなく、実際にあるはずがないと思っていた。
 けれど俺たちはまさに夢物語のような出逢い方だった。
 一目見て恋に落ち、頭から離れなくなったお互いの姿。
 なかなか言い出せずにいて、もどかしかった日々……。
 それも当たり前。同性に告白をするのは、異性に告白をする時よりもっと勇気がいること。
 こんなことを言ったら、おかしな目で見られるに違いない。
 そんな考えがずっとあり、言うことができなかった。
 けれど君は違った。
 君は、自分の想いを真っ直ぐ俺にぶつけてきてくれた。恐れることなく、強く自分の想いを貫き通すような瞳で──。
 そこで気づいた。俺はなんて臆病だったんだろうと。
 否定されることを恐れて踏みとどまるよりも、自分の想いを相手に伝えることが何よりも大切なことだということを、君が教えてくれた。
 俺は君を愛している。
 世の中には沢山人がいて、これからも新しい出逢いが数え切れない程あるだろう。
 でも俺は、そんな人々の中で君を選んだ。
 たとえ新しい出逢いがあろうとも、君を想う俺の心はずっと変わりはしない。
 君に出逢ったのは、決して偶然ではなかったのだから。



【END】