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変化



 朝はいつもやってくる。そして俺は、いつもと同じように会社に出勤する。
 そんな変わらない日常に、最近では嫌気がさしてきていた。
 ただ毎日繰り返し過ごしているだけで、何の代わり映えもない日常なら、いっそのこと早く終わってくれればいいのに……。
 そんなことを思い始めていた時だった。
『今日からお世話になります、林原完爾(けんじ)です!よろしくお願いします、榊さん!』
 俺とは比べものにならないくらい元気なそいつが現れた。
 あまり関わりたくないタイプだな……。
 それが俺が持ったそいつの第一印象だった。
 仕事で顔を合わせているだけならば我慢はできる。しかしそいつは、仕事は終わってもなぜか俺に付きまとってきたのだ。
 何で俺に懐く?こっちにしてみればいい迷惑だ。
 それはおそらく、はっきり態度に出ていたと思う。その自覚はちゃんとあったが、あえて直そうとはしなかった。そうすれば自然と離れていくと思っていたから。
 それなのに、変わらずにしつこく付きまとってくるそいつ。いい加減頭にきて、付きまとってくる理由を訊いた。そして、言葉を失った。
『オレ、もっと榊さんのことが知りたいんです。たぶんオレ榊さんに一目惚れしたんです。そして、知っていく度にどんどん好きになっていってるんです』
 有り得ない。というかふざけるな。
 俺はそんな告白をしてきた林原に何も答えず、無言のままその場を去って行った。
 その日からだ。俺の日常が変わっていったのは。
 何も考えずただ毎日を過ごしていた今までとは違い、ふとすると林原のことを考えてしまっている自分がいた。
 そして考える度に、俺の中によく分からない感情が生まれていったんだ。
 林原が現れてから、俺の日常はずいぶん変わってしまった。
 その変化が良いものなのか、それとも悪いものなのか、俺にはさっぱり分からない。



【END】