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愛し方をシラナイで★
「おい、まだイくんじゃねえぞ?」
室内に響く、濡れた音と荒い息づかい。
「やっ…もう……」
ギリギリまで追いつめられ、限界に達しようとしている躰をベッドに横たえ、イかせてもらえないもどかしさに、一樹(いつき)は頭をベッドに擦りつけながら刺激を与え続けている蓮司(れんじ)を潤んだ瞳で見上げる。
「まったく、お前は堪え性がねえんだから」
蓮司はクスリと笑うと、身に着けていたバスローブの紐を解き、それを今にも達してしまいそうな一樹の雄の根元に縛り付ける。
「や…だっ。とって……」
「まだイくなって、言っただろ?」
「あっ…や……!」
根元を縛られたまま強い刺激を与えられ、一樹はイけない辛さに目に生理的な涙を流す。
「何だ?泣くほどイイのか?」
一樹の涙を唇で掬い取りながら、蓮司がわざとらしく囁く。
「はっ…ん……」
蓮司の声を聞いただけでも背筋に快感のはしった一樹は、蓮司の言葉を否定するように首を横に振った。
「よくないってか?ああ、そうか。今日はまだこっち弄ってやってねえもんな?」
首を横に振った一樹を見て、蓮司は今日まだ一度も触れていない後孔へと手を持っていった。
「ヒクついてるぜ?触られるの、待ってたのか?」
触れられたことで収縮する一樹の後孔の襞を撫でながら、クククと喉で笑う蓮司。
「ちっが……」
蓮司は、否定する一樹を無視して後孔を撫でていた手を一樹の口に持っていく。
「ん……」
「濡らさなくて痛いのはお前だ、ちゃんと舐めろよ?」
蓮司は一樹の口の中に指を入れ、一樹にそれを舐めるように促した。それに一樹は懸命に舌を動かす。
一樹は蓮司に逆らえない。それは、こんな蓮司でも、一樹は深く強く愛してしまっているから。
愛を知らない蓮司は、愛情表現の仕方も知らない。ただ己の欲望のままに一樹を抱き、満足するまで貪る。
そんな蓮司を知っているからこそ、一樹は逆らうことをしないで大人しく抱かれる。しかし、この関係をイヤだと感じたことは一樹には一度もなかった。
蓮司は自分を必要としてくれている。こんな、何の取り柄も持ち合わせていない自分を、愛してくれている。
お互いの間に甘い睦言はないけれど、心の底で惹かれあっているのは事実。まだハッキリとした関係はよく分かっていないけれど、お互いがお互いを必要としている。
今の二人はそう感じている……。
【END】
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