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結局嘘は?
「大嫌い大嫌い大嫌い!何度も何度も言ってんのに、どうして信じねーんだよ!?」
「だって、いつも本心じゃないだろ?」
俺の叫びに、飄々とした顔で答える貴志(たかし)。
「はっ!?いっつも本心に決まってんじゃねえか!何の根拠があってんな戯れ言言っていやがんだ!?」
「根拠も何も、お前の全てが物語っているじゃないか?」
分からないのか?とでも言いたげに貴志は首を傾げる。
首を傾げたいのはこっちの方だ。俺のどこをどう見たらそんな風に受け取れるってんだよ?
嫌いと言ったら嫌いなんだ。これほどまで繰り返して言っているのに、そう受け取ろうとしないこいつの頭の中身を見てみたい。
「本当に分からないのか?」
そう言いながら貴志が近づいてくる。
貴志の言動が、どうにも俺を馬鹿にしているようにしか取れなくてムカつく。
近づいてくる貴志に比例するように、俺は貴志から離れた。
そんな俺を見て、貴志は可笑しそうに鼻で笑うと、ズイッと一気に距離を縮めてき、俺の腰に手を回してきた。
「なっ!?お前、何しやがんだ!?」
「あれ?痩せた?」
俺の話を聞いていないらしい貴志は言いながら俺の腰を撫で回す。
その手の動きが段々といやらしくなっていき、俺は慌てて声をあげる。
「ちっ!止めろ!」
「ちゃんと食べないと駄目だよ?これ以上痩せたら躰壊しやすくなってしまうからね?」
だが、貴志は俺の言うことなんか聞いちゃいない。
「っ!自分の健康は自分が一番分かってんだよ!お前にいちいち口出しされる筋合いはねえよ!つーか、とっとと手を離しやがれ!!」
口で言っても効かない奴には、態度で示すのが一番だ。俺はバシッと俺の腰に回っている貴志の手を思いきり叩くと、すぐさま貴志から離れ、
「これ以上、俺に近づいてくるな!」
なんて、ありきたりな捨て台詞を吐くと、猛ダッシュでその場を後にした。
俺の名前を呼ぶ貴志の声が聞こえたが、無視し、限界になるまで走り続ける。
どれくらい走っただろう。貴志からだいぶ離れることができたのは確かだった。
人気のない場所で俺は立ち止まり、乱れまくった息を整える。
……ホントは解ってる。自分のことだ。解らないわけなんてない。
俺は貴志のことが大っ嫌い。そして俺は貴志のことが……。
そんなこと、死んでも認めたくない。だって、絶対にそんなことはあってはいけないことだ。ありえない。
だから俺は、貴志を嫌いなままでいる。嫌いなのも、嘘ではないから。
別に、俺は嘘はついていない。
自分の気持ちにも、アイツにも──。
【END】
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