SS

僕なりに考えています



 君の気持ちに応えたら、君は僕の前からいなくなってしまうんじゃないだろうか? 首を立てに振っても、横に振っても、きっと君は僕の前から……。
 君の告白を聞いてから、僕は毎日それを考えずにはいられない。
 それは僕が、弱いからなのか。それとも――。





「はぁ〜……。本来、僕はこういったことを考えるのは苦手なんだけどな……」
 自分のこと、自分が好きなことしか考えて来なかった、いわゆる自己中心的な僕は、どうにも他人の気持ちを考えるということが苦手でならない。苦手というレベルではないだろう。できないんだ。考え始めると頭が痛くなるし、動悸も激しくなる。
 そもそもの大きな理由は、他人と関わることなんてほとんどなかったからという点なんだろうけれど。
「他人と関わらなかったのは僕自身が選択したことだから、そんなもの言い訳にしかならいのかな……?」
 どうしてこんな状況になってしまったのか、自分でもよく分からない。
 彼とは、特に親しくした記憶は僕にはない。というか、僕には友人と呼べるような存在は一人もいない。
 それなのになぜ、彼は僕に恋愛対象としての告白なんてしてきたんだろうか……。いくら考えても答えなんか見つからない。
「直接訊いてしまえば話は早いんだろうけど、なんかいまいち訊く気になれないっていうか……」
 僕にいくじがないのか、それとも僕自信が気づいていないだけで、他に理由があるのか……。
 彼にとっては僕が初恋らしい。こんな僕が初恋だなんて、可哀想……。僕なんて……。
 一人で悩んでも仕方がないけど、相談する友人は一人も居ない。だから、一人で答えを探さなければいけない。
「……恋人じゃなくて、友達になってくれの方が嬉しかったかな?」
 友人が欲しいなんてこれっぽっちも思っていないのに、そんなことを考えてしまう。だってそうだろう恋人なんかより、友人の方がはるかにその関係性は軽い。そして、疎遠になったとしても恨まれることはないだろう。
 めんどくさいなと独り言をごちながら、彼の待つ中庭に移動する。
 まだ答えは決まってないけど、彼を目の前にすればもしかしたらハッキリするかもしれない。
「なるようになる。……でいいのかな?」
 太陽の差し込む中庭。風がそよぐたびに揺れる葉たち。色とりどりの花が植えられている花壇が道を作っている。その中を僕は中心の薔薇園で空を見上げている彼の元に向かって思い足を進める。
 答えを出さないという選択は今の僕には許されない。こんなにも他人について考えるのは彼がさいごなんじゃなんだろう。確信めいた予感が、彼の横顔を見て僕の中に生まれた。
「――好きだよ」
 その台詞を言うのはそう遠くない未来の話――。



【END】

20130414