雅臣と輝紀

8周年記念小話

※メタ発言アリ※


雅:なーんていうかさ、最近雑だよね。

輝くん:あ?

雅:前はさ、今よりは雑な扱いは受けてなかったと思うんだ。中身が無いなりに、いちおう話になってたのに、最近のオレたちって、なんかお飾りっていうか、その場しのぎの存在っていうかさ。

輝くん:あ?

雅:繋ぎっていうのかな? 他の作品を書いてる時の、更新ストップしないために生まれてきたのかな? なんて思っちゃったりしてさ。

輝くん:あ?

雅:まあね、それでも、オレの出番があるのは嬉しいよ。嬉しいけど、もうちょっと違う扱いとか、連載みたいにテーマだけじゃなくて、内容のある物語を展開したいっていうか。

輝くん:あ?

雅:そんなこと考えるのって、おかしいのかな? 厚かましいのかな? でもさ、なんだかんだで、オレたちって一番の古株なんだよ? 本当は古株的存在になるために生まれてきたT家の人々なんて、ほっとんど頭から無くなってるくらい、オレたちは昔からいる人たちなんだよ?

輝くん:あ?

雅:それなのに、オレたちのプロフィールも適当で、いまだにそれ専用のページも作られてないんだよ? 名字とか簡単に忘れ去られてるんだよ? 好きなら好きなりに、ちゃんと関心ってものを持って欲しいと思わない?

輝くん:あ?

雅:……だよね。こんな愚痴ばっかり聞くの、嫌だよね。オレももっと明るい話題とかあったらいいんだろうけど、これからも変わらない状況なんだろうなとか考えると、どうも憂鬱な気持ちになっちゃって。

輝くん:あ?

雅:オレの話をちゃんと聞いてくれるのは、輝紀しかいないんだよ。輝紀ー、オレを癒してよ!

輝:……お前、かなり可哀想な奴だったんだな。知ってたけど、再認識させられた。

雅:あ。本物の輝紀おかえり。どこ行ってたの? 起きたらいなくて悲しかったよー。

輝:朝飯なかったから買ってきた。パンでよかったよね? ……つかお前、そんなもの、いつから持ってたんだ?

雅:これ? これはね、最近輝紀に秘密で作っていた【輝くん】人形だよ! 似てるでしょ?

輝:……お前はどうして、そういう物を。

雅:音声は、録音して内蔵しました。おなかを押すと音が出ます。

輝:……いつ録った。

雅:輝紀の口癖だから、いつでも録り放題。一言しか録ってないから安心して。

輝:……そんなに俺、【あ】言ってんのか?

雅:自覚ない? まあ、口癖ってそういうもんだよね。ああ、でも、治さなくていいからね? オレ以外の人には言ってないし、可愛いからそのままでいいよ。

輝:…………ぜったい――。

雅:治らないから。

輝:……雅臣が食い気味で喋った、だと……。

雅:そこ驚くところ!?

輝:雅臣だけはちゃんと俺の話を聞いてくれる奴だと思っていたのに、それは俺の勘違いだったのか……。

雅:え? え??

輝:ああ、雅臣がそんなになっちまったら、もう俺の話を聞いてくれる人間なんて、この世には存在しないんだろうな。ああ、可哀想な俺……。

雅:て、輝紀!? どうしたの!? どうしちゃったの!? 安心してよ輝紀! オレはちゃんと輝紀の話、聞くよ! オレ以上に輝紀の話しを聞ける人間なんて、この世には存在しないよ! 愛してるよ輝紀!

輝:……本当に俺を愛してるか?

雅:もちろん! 愛してる! 世界中に叫びたいほどに愛してる!!

輝:なら、俺のお願い、訊いてくれるか?

雅:きくきく! なんでも聞いちゃう!

輝:その人形よこせ。

雅:イヤ。

輝:…………。

雅:イヤイヤ。

輝:……………………。

雅:イヤイヤイヤ。

輝:……………………ちっ。

雅:渡したら、前のパペットの時みたいに捨てんでしょ? これあげるから、それだけは勘弁して。

輝:は? …………なんだ、これは……。

雅:【雅くん】人形!! おなかを押してみて!

輝:…………。

雅くん:テルキアイシテル!

輝:……………………ちっ。

雅:て、輝紀。絞まってる。生身の人間にはしてはいけないくらい、大事なところが絞まってるから!

輝:本人にできないのが残念だ。

雅:本人にしないでくれてありがとう! でもやめたげて!

輝:あ、おい、取るなよ。

雅:取る! 取るよ! 自分の分身が痛々しいことになってんだから、取るに決まってるよ! 当製品は、取扱説明書をお読みの上、正しくご使用ください!

輝:俺、とりあえず弄ってみる派だ。

雅:オレはちゃんと読むよ。読んでもその通りにはしないけど。

輝:つか、取説あんのか、それ?

雅:ないね。あとで作るよ。

輝:作らなくていいから。……それにしても、ホント器用だよな。

雅:細かい作業はオレにおまかせあれ。

輝:ふん……。それ、寄こせ。

雅:もう、痛くしない?

輝:ああしないしないいたくなんてしませんよ。

雅:嘘でも感情込めて! ……もし壊したら作り直すからいいよ。

輝:壊さねえから安心しろ。

雅くん:テルキアイシテル! テルキアイシテル! テルキアイシテル!

輝:………………。

雅:(輝紀が真剣に、オレの作った人形を弄ってる)

雅くん:テルキアイシテル!

輝:…………………………。

雅:(どうしたんだろ? そんな真剣な顔するほどのもんじゃないと思うんだけど?)

雅くん:テルキアイシテル!

輝:…………ふん。おい雅臣、これと同じこと言って見ろ。

雅:え? 輝紀、愛してる?

輝:……ふん。

雅くん:テルキアイシテル!

輝:もう一回。

雅:輝紀、愛してる。

輝:………………。

雅:(ホントに、どうしたわけ?)

輝:…………これ、返す。

雅:え? 気に入らなかった?

輝:いや、よく出来てるとは思う。

雅:どしたの?

輝:………………なんか、本人の方が……。

雅:ん? オレ?

輝:……………………お前が言った方が、いいなって……。

雅:て、輝紀……!!

輝:わっ! こら! 抱きつくな!!

雅:輝紀がそんなこと言ってくれるなんて! オレ、すっごく嬉しい!

輝:……なら、頼みを聞いてくれるか?

雅:デジャブ。

輝:気のせいだろ。

雅:壊させないよ。捨てさせないよ。直すって言ったけど、お金結構かかってるんだからね。

輝:金の話を持ち出すな。んなこと言われると、手出しできなくなる。

雅:お金にはシビアな輝紀くん。

輝:節約好きで何が悪い。で、頼みなんだが、……もうその人形に話しかけんな。

雅;え?

輝:簡単な話だろ? 話しかけんなら、俺にしろって言ってんだ。

雅:……うそ。

輝:何が嘘か。

雅:だって、輝紀が一日に何回もデレを出すなんて、そんなこと、あるものなんだろうか……。オレは、今、初めてを体験しています。

輝:アホなこと言ってねえで、人形の置き場でも考えとけ。


 輝紀はそう言いうと、買ってきた朝食を食べ始めた。
 雅臣は輝紀の発言が未だに信じられなくて、パンを食べ始めている輝紀と、手元にある輝くん人形を交互に見ながら、耳元がほんのりと赤くなっている輝紀を見て、嬉しそうに微笑むのだった。



【END】

どこが記念なのか。
輝紀がいつも以上にデレを出したというところが、記念なのかもしれません(笑)
最後までお読みいただきありがとうございました。

20150301